205 寸劇・ある通信内容
205 寸劇・ある通信内容
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(二日目 13:35 東の森南東部)
雑音。
……
………
…………
「……こちらザドゥ。智機、そちらの状況はどうだ?」
「……よくもまあそこまで余裕を持って聞けるものだな」
「何の事だ?」
「『何の事だ?』ではない!貴様、干渉しないと言っておきながら何故参加者を随行させている!?」
「……アレは勝手に付いてきているだけだ」
「それはへ理屈と言うのだ!……早期抹殺を提案する。彼女の能力は危険だ」
「それは認めない。彼女は既に参加者抹殺を目的に変更している。
「子供独特の短絡的かつ一時的な選択だ。すぐに別の影響を受ければ敵対側に回る」
「ならばそうなってからで良かろう?」
「……………ッ!貴様がそういう……」
「ならば聞くが智機よ」
「は?」
「彼女の主……アズライト抹殺の一件、私は指示を出した覚えは無いのだがな?
事後報告でアズライト、及び伊頭鬼作の殺害完了の報告を受けただけだ。
……何のつもりだ?」
「……彼らは既に学校に辿り着き、こちらへの直接的な反撃を目論んでいた。
貴方が睡眠中だったので、独断で可能な最善の行動を取っただけの事だ」
「『だけの事』か……ククッ、智機よ。お前も随分アナログ的に動くようになってきたではないか?」
「……誉め言葉と受け取っておこう。で……状況だったな」
「そうだ。素敵医師やケイブリスの動向、また他の参加者の動きの報告を頼む」
「分かった。まず素敵医師だが……現在No.16・朽木双葉のいる地点へ向かっている」
「双葉?あの者には首輪を解除されていたのではなかったか?」
「先程になって突然反応が復活した。どうやら自分で再着用したようだ。
……彼女は『シキガミ』という術を使う。万一戦う事になった場合は用心する事だ」
「フン……ケイブリスは?」
「こちらは単純だな、一直線にNo.1・ユリーシャとNo.2・ランスの最終確認ポイントに
向かって進んでいる。……あの二人も首輪が解除されているので現在の地点は未確認
だが、この速度なら例え彼等が移動中だとしても程なく発見できるだろう」
「何か音声は?」
「何も。ひたすら喧しい笑い声が聞こえてくるだけだ……聞くか?」
「遠慮しておこう」
「貴方にしては賢明だ……で、No.28・しおりについては聞くまでもあるまい?
今お前の50m後方で静止している」
「ああ、そちらの方を振り向くなと言われているがな」
「?」
「……生理的欲求、だそうだ」
「下らない事を……No.23・アインについては現地点、及びその行動は不明。
ただ、現在まで断片的に傍受された内容から予測するに彼女も素敵医師を追撃している
可能性は高いだろう」
「仇討ちか……」
「そういう事だ。理解に苦しむがな……残りの参加者だが、No.40・仁村知佳以外は全員病院に
向かっている。おそらくはNo,8・高町恭也の治療の為だろう」
「仁村知佳は?」
「それが……補足できない。首輪を外していないのは間違い無いんだが、どうも磁場か
何かに引っ掛かっているようで発信が安定しないのだ」
「そうか……了解した」
「……………ザドゥ様」
「ん?」
「貴方は知っているのではないのか?」
「何を?」
「あのプランナーの声が貴方にも聞こえた筈だが、アレはこう言っていた。
この島の何処かに一つだけ役立つかも知れぬものを召還した。
……これは何を示している?」
「知らん、私もあの方から全てを聞かされている訳ではないのでな。
……聞いていれば、あのような魔物など飛び入りで入れるものか」
「心当たりも無いのか?」
「全くな……ただ『それ』が、我々にとってのケイブリス、あるいはそれ以上の影響力を
参加者に与える物で無ければ釣り合いは取れないだろう」
「それだけの威力を持つ武器・兵器だと?」
「あるいは人間か、ケイブリスのような化け物かもしれん。
……聞きたい事はそれだけか?ならばこれで通信を終了するが……?」
「ああ、結構だ」
「……智機よ」
「は?」
「我々管理者は、本来参加者同士の殺害を補助するのが役割だ……分かっているな?」
「……最善を尽くしましょう」
「……………」
…………
………
……
雑音。
「……そうとも、最善をね……」
【主催者:ザドゥ】
【現在位置;東の森南西部】
【所持武器:己の拳】
【スタンス:素敵医師への懲罰
参加者への不干渉】
【備考:右手に中度の火傷あり】
【主催者:椎名智機】
【現在位置:本拠地・管制室】
【所持武器:レプリカ智機×数十体
内蔵型スタン・ナックル
軽・重火器多数倉庫内に所持】