155 第4回定時放送 AM00:00
155 第4回定時放送 AM00:00
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本拠地を移しかえて、ずいぶん経つ。
間もなく、定時放送の時間だ。
「フン、これだから人間は。」
隣で眠るザドゥを見て、智機がせせら笑った。
「稼働時間の三分の一を無為に過ごすとは非効率なことだ。」
ふたたびいつもの無表情に戻ると、智機もまた隣で眠る男のように目を閉じた。
眠ったわけではない。
ここにある智機はいわば「マザー」である。
この島のいたるところに彼女の予備のボディーが隠蔽されている。
参加者が戦闘に参加しなかった場合、それらをいっせいに稼動させるためだ。
そして、彼女はこのゲームの始まりの場所、
木造校舎にある彼女のボディーを起動させた。
チュイィィィィィィンンィィィィィィィィィィィィ
低い起動音を立てて、仰々しい機械類に接続された智機の一つが目を開いた。
フゥ、と溜息をついて首を鳴らすところなど、人間そのもののようにも見えるが、
どんな感情を映すことのない瞳がそれを否定している。
収容されていた金属製のボックスから出ると、智機は軋む床を踏みしめながら、
廊下を抜け階段をあがり、ある部屋の前で立ち止まった。
そこは参加者達が寝かされていた部屋。
うっすらと埃に包まれたその部屋には大小さまざまな足跡が乱雑にちりばめられていた。
部屋の敷居をまたぐと、その部屋の中央にすえつけられたままのマイクに手を伸ばした。
第一回目の定時放送でも使用されたこのマイクは、島の全スピーカーに接続されている。
これを使えば、余計な手間をかけずとも定時放送が行えるのだ。
「ウム、非常に効率的だ。」
相変わらずの表情を浮かべたままマイクのセーフティロックを解除して、スイッチ・オン。
通算四回目の定時放送であった。
ヴウウーーーーーーンンンーーーーーーンンン…………
「ゲーム開始からちょうど24時間が経過した。
それでは死亡者を発表する。
7番、堂島薫 17番、神条真人 19番、松倉藍
22番、紫堂神楽 32番、法条まりな
以上5名が死亡だ。」
発表を終えた智機はフムといって顎に手を当てた。
「……少ないな。参加者諸君に参加する意志がみえないようなら、
こちらとしても考えがあるのでそのつもりで・・・
残り参加者数は18名、諸君らの奮闘を期待する」
言ってみて、最後の文句は余計だったかなと、自嘲気味に笑う。
それでも彼女の瞳は瞬きもしない。
やはりそれは目の前の風景を映像として認識する機関でしかなかった。
そろそろあの男も目を覚ますだろう。
そうなる前に戻っておかなくてはうるさいからな、
そんなことを考えがなら智機はその部屋をあとにした。