150 空から何かが落ちてくる(ランスside)

150 空から何かが落ちてくる(ランスside)


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(18:58 洞窟内)

「ン………」
小さく声を上げ、ユリーシャ(No,01)が目を覚ます。
「おう、起きたか?」
彼女を膝に乗せたまま、見下ろすランス(No,02)。
「あ……ランス……様……?」
自分がどこにいるか一瞬分からなかったらしく、きょとんとした顔になるユリーシャ。
だが、やがて寝る直前の記憶が明確になり……慌ててランスの膝から身を離す。
「ご、ごめんなさいランス様!」
「ん?」
「その……ずっとランス様の膝で、私……」
「おう。可愛い寝顔だったぞ、がはは」
ランスの言葉に耳まで赤くなるユリーシャ。
「う〜……そんじゃ、ユリーシャおねえちゃんも起きた事だし、ごはんにしよごはん〜。
 アリスもーちょーぜつおなかぎゅーぎゅーだったり〜……」
お腹を抑えつつアリスメンディ(No,34)が言う。
「そうだな。考えてみりゃ朝食ってから何も食っとらん。おいユリーシャ、袋どこだ?」
「は、はい、ここです」
慌てて傍らのディバッグを差し出し、ランスに渡す。
その中身を開け、ランスは小さく舌打ちをした。
「……チッ、残り1日分あるか無いかってトコだな」
どうやら一人あたりに振り分けられている食料は2日分のみらしい。
これもスピーディーな試合進行の為の処置なのだろう。
「(あとの分は自分で探すか……奪うかって事か……)……ん?」
ふと、ランスは自分をうるうると見つめるアリスに気がついた。
「何だアリス?」
「んー、ランス……ごはんちょーだい♪」
「……お前のはどうした?」
「食べちゃった♪」

……ぽかーん!

「いったー!うう、なにゆえに本気で殴るかなー?」
「当たり前だこのアホッ!」
「なんでなんでなんでかなー!?ぷんぷん!しょーがないじゃん!アリスってば
『せーちょーき』なんだから!育ち盛りは食べ盛りだよ!?はいりはいりふれはいりほー
『ハッハー』だよ!?」
変な外人の真似までして言い返すアリスに、ランスの額の青筋が一本増える。
「やかましいっ!第一アリス、魔界を統べる何とかならそのくらい自分で作れッ!!」
「ちょーぜつ無理ッ!あたしお薬しか作った事無いってばー!」
「でええいっ!とにかくお前にやる飯なんぞ……!」

そこまで言いかけ、突然ランスが沈黙した。
動きもぴたりと止め、耳を澄ます。
「……………」
「ラ、ランス……?」
「……何だ、こりゃ……?」
けげんな二人をよそに、ランスはゆっくりと洞窟の外に向かった。
その後を追うアリスとユリーシャ。

外に出る。
まだ日は完全には落ちていないものの、木々に囲まれた洞窟周辺は既に闇夜となっていた。
「どうしたのですか、ランス様……?」
「……変な音がしやがる」
「変な……音?」
小さく頷くランス。
「おいアリス。木の上まで飛んで、東の方を見ろ」
「う〜、おなかぎゅーぎゅーなのにー(ぱたぱた)」
渋々ながら上へ昇ってゆくアリス。
「……どーだ!?何か見えるか!?」
「ちょっと待ってってば!今見え……え?ええ!?えええええ!??」

「何が見えた!?」
「うわ、うわ!おっきな煙がもくもくってなってて光っててなんか黒いのがお空に
 向かって飛んでっててぶわーってぶわーって!」
「ええい、さっぱり分からん!」
「だーかーらー!何かが煙をぶわぶわ吐きながらお空に向かって飛んで行ってるんだってばー!」
「……何でしょうか?」
「分からん……が……」
ランスは、自分の女の一人である眼鏡少女の事と、彼女が得意げに見せたある設計図
の事を思い出していた。
煙を吐き、


空よりも高い所にある世界に向かう乗り物。
彼女は『ちゅーりっぷ百号』と呼んでいただろうか?

「……ランスー、アレ、もう消えちゃったよー?」
回想を引き戻したのは、上空からのアリスの声だった。
「あ?……消えた?」
「うん、ずぅぅぅぅぅぅっと高い所まで行って、キラーンって」
「……そうか」
「あ、あの……ランス様、大丈夫なのでしょうか……?」
正体不明の事態に戸惑うユリーシャ。ランスは緊張を解くと、ユリーシャに笑いかけた。
「がはは、大丈夫だ!心配するな!そんじゃ改めて飯に……」

……………?
そこまで言って、再び止まる。

「わ……わわわわわわわわ!?」
同時に上空からアリスの叫びが聞こえた。
「きききてきてきて……ちょちょ、ちょーぜつだいピンチかも!?今のヤツ、今度は
 コッチに落ちてきてるよお!結構おっきかったりするかも―――!!」
「なっ……何いいいいいいいい!?」

一度消えていた音が、再び大きくなってきていた。



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