139 おにーちゃん
139 おにーちゃん
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人生てぇのはよぉ。
何が起こるか分からねぇもんだ。
考えてみりゃぁ,ほんの数日前までは互いに離れて暮らしてるとはいえ、
俺達は仲のい〜い兄弟だったんだ。
それがよぉ〜、まさかこんなことになるたぁ思わなかったぜ。
ガキの水浴びが終わって泉を離れたあと,
今度こそ学校に向かうことにした俺様達一行、
俺は暗い山道をアズやんとアズやんにべったりの凶のじょーちゃんの後ろをついていったんだ。
今もガキンチョはおにーちゃん、おにーちゃんとはしゃいでやがる。
まったくうるせぇったらありゃしねぇ。
アズやんもアズやんだぜ、どうせ凶にするんなら、
もっと色気のある女にすりゃあいいのによぉ。
まぁ、そんな楽しいおしゃべりに夢中だった二人は気づかなかったよーだが、
俺様の「鬼作さんイヤー」は聞き逃さなかった。
道を挟むように下草が生えてる中そこだけぽっかりと途切れてやがったんだ。
足場がもろいとこでよぉ、
たぶん段差も朝方にあった地震かなんかでできたんだろうな。
足元に5メートルくらいの崖が途切れた道の奥にあったんだ。
その下から、なんか人がうめくような声がするんで、恐る恐る覗いてみたんだ。
もしも女が怪我して動けねぇのなら、俺様の『美学』を披露できるしな。
ところが、ところが、だ。
女なんかいやしねぇ。
いたのは男、しかもいい加減に見飽きた俺様と同じ顔ときたもんだ。
凶のじょーちゃんにやられたあと、どこへ行ったかと思えば、
こんなところにいやがった。
真っ赤に染まった手ぬぐいで腕の傷をおさえて、
ブルブルガクガク震えてやがんだ。
真っ青な顔が今にも泣き出しそうにして脂汗をだらだら流しながら、
俺のほうを見上げてんだが、
その顔が、「見逃してくれ、俺達は兄弟じゃねぇか?」って頼みこんでるみてぇで、
俺様は堪らなく愉快になって思わず笑っちまった。
俺様の豪快な笑い声に気づいたアズやんが振りかえるもんだから、
慌ててズボンを下ろして息子をまろび出させて愛想笑いを振舞ってやったんだ。
したら、小便をもよおしたと勘違いしたのか、
アズやんはこっちに会釈すると
相変わらず「おにーちゃん」に縋りつくじょーちゃんといっちまった。
別にそういうわけじゃねぇんだがよぉ、
いまの俺の動きをみて怪訝な顔してる兄貴をみたら
いーいアイデアが浮かんできたんだ。
やっぱ、俺様は天才だ。
へっ、あんたはよぉ、日ごろの行いが悪いからこーなっただぜぇ、遺作おにーちゃん♪
イチモツに手を添えると、
兄貴は俺の考えを察したのか急にうろたえだしやがった。
へっ、さすが兄弟だ。なんでもお見通しってか?
だがよぉ、それは俺も同じことなんだぜ、兄貴ぃ。
あんた、そこから動けねぇんだろ?
登ろうにも片手じゃ辛かろうし、
なにより足が変な方向に曲がっちまってるものなぁ?
大方,あわくって逃げてる途中ここに転げ落ちて折ったんだろがよぉ,
あんたってやつは、肝心なときに間抜けこったなぁ。
クッ,ククククククッ,カハハハハハハハハハハハハ
こいつはよぉ、あんなにも優しかった臭作兄ィを
俺達の誇るべき長兄臭作兄ぃを侮辱しやがった罰だ。
こいつでその腕の傷,消毒してやるよぉ、
たぁっぷりとうけとりなぁっっ!
俺が下腹部の緊張を解くと
筒の先から"ごーるでんしゃわー"が勢いよく降り注ぐ。
きれーな放物線を描いて兄貴の体中いたるところに降り注ぐ。
ヘッ、黄金プレイもなかなかに乙なもんじゃねぇか。
ぶるっと体を震わせると、俺は手ぬぐいでその先を拭った。
年取るとキレが悪くなってよぉ、こうしないとパンツに黄色いしみができちまうんだ。
まったく、年はとりたくないもんだぜぇ。
俺様の聖水でべったべたに濡れた兄貴を見下ろすと、顔が緩んじまった。
さーて、あんまり遅くれるとあの御人好しどもに怪しまれるってもんだ。
そろそろ追いかけるとするかぁ。
あばよ、運がよければまた会おーぜ、遺作おにーちゃん?
【鬼作】
【現在地:山道】
【スタンス:らすとまんすたんでぃんぐ】
【武器:コンバットナイフ・警棒】
【遺作】
【現在地:山道下崖】
【スタンス:???】
【備考:被曝、右腕喪失、左足骨折】