120 復活

120 復活


前の話へ<< 100話〜149話へ >>次の話へ 下へ 第三回放送までへ




(1日目 PM16:30)

北の森の中を小人の後ろについて歩くこと数十分。
日も傾き始め、ただでさえ薄暗い森の中は
真夜中もかくや、と思わせんばかりの暗さである。
「んがーーー、まだかっ!」
剣を振り振りランスがわめく。
「そーんなこと言われても、アリスちゃんにも分か〜んな〜い」
「俺様にこんなに歩かせるとは、見つけたらただじゃおかん。」
そういってがなり散らしていたランスだが、
緑が切れ、森が開けた場所に出た途端、
ピタッ、と動きを止めゆっくりと辺りを見渡す。
「ム、どうやらここらしいな。」
そしてトテトテと前を行く小人の襟口を摘み上げる。

眼前には茸のかさのように光沢のある葉が鬱蒼と生い茂った
幹の直径数メートルはあろうかという一種荘厳な巨木が聳え立ち、
とぐろを巻く蛇のごとく幾重にも絡みついた蔓草に
咲き乱れたる見目鮮やかな色とりどりの花々が馥郁たる香りを漂わせる。
その古木に侍るようにして腰の高さほどの低木が、
大人の腕ほどもある木の根の間を縫うように群生し、
思い思いに広がる枝に小さな白い花が無数に咲き誇る。
秘めやかなこの地には華やぐ静謐こそが似つかわしい。


その神秘的な静寂を打ち破るようにして、
雑多な植物の塊に向かって森を揺らさんばかりの大音声を張り上げる。。
「オイ、オンミョーなんとか、おまえに頼みがある。
この人形の命が惜しけりゃ、出て来い。」
返事は無い。
「アハハハハ、ランス〜、ダメだよ。
相手はけが人さんなんだからー
もっとやさし〜く、声かけたげたほうが、吉。」
笑いながら、バンバンと背中をたたく。
「えぇ〜い、叩くなうっとうしい。」
そういって、大きく一息吸うと、
「5秒待ってやる。
いいか。
5秒で返事がなけりゃ、こいつを殺してランス・アタックだ。」
言うが早いか、早口にカウントをはじめる。
アリスも嬉しそうにカウントしている。
「・・・2,1。ターイム・オーバーだ。
フン、脅しとだと思ってるのか?
残念ながら俺様はやるときはやる男だ。
こいつは殺す。」
「ランス、ランスー、この子殺しちゃかわいそー」
アリスが手足をじたばたさせて抗議する。
「うるさい、黙れ、
俺様はやるといったら、やるんだ。
・・・・・・・・・・・・ん?」
妙に軽い右手を省みる。
小人はいつのまにかランスの手から消えていた。



おりょ?式神さん消えちゃったねー、ふっしぎ〜。
長生きするといろんなもんが見れてたのし〜ね〜、ランス。」
「くっそー、どこに消えやがった。
その前に、誰が消しやがったんだ。」
くやしがるランスは地団太を踏んでいる。
そのとき、

「はぁ・・・、またアンタなの?」

どこからともなく聞こえてくる、かすかなくぐもった声。
はしゃぐアリスと、いらだつランスは同時に動きを止め、
グルッと辺りを見渡す。
すると再び、

「見逃したげるから、死にたくなかったら、
さっさと向こうへ行きなさいよね?」

遠いような近いような不思議な声があたりに響く。
「ムム、その声はいつぞやのナマイキナイチチ娘だな?
かーーーっ、ナマイキ、ナマイキ、ナマイキ。
俺様のハイパー兵器が治ったあかつきには死ぬほどいかせて
俺様無しでは生きていけない身体にしてやる。」
言って、木の根を蹴りつける。
「ランス、ランス〜、だからこの人にランスのオチ○チン、
治してもらうんじゃなかった〜?」
荒れるランスに鋭い突っ込みを入れる。



「ム・・・・・・・・・・・・
あー、コホン。
俺様は心が広い、今までの無礼は許してやる。
ガハハハハハ、感謝しろ。
・・・そこでだ。感謝ついでに俺様と取引しねぇか?」
応えはない、が気にせず続ける。
「実は、俺様は今たいへん困っている。
気色悪いジジイの呪いで俺様のハイパー兵器が使い物にならん。
おまえがなんとかいう魔法でスパッと直してくれたら、
俺様が一晩中しこたま可愛がってやろう。」
「いや〜ん、ランスと3Pだ〜。
考えただけで、ちょーーぜつ盛りあがるーーーー」
アリスがもじもじと身をくねらせて
陽気に合いの手を入れる。
「うむ、生意気なおまえもすぐにウハウハのメロメロだ。」
アハハハハ、ガハハハハ、
2人は胸をそらせて大笑いする。
「あんた、何考えてんの?マジでそんなことで喜ぶと思ってんの?」
幾分エコーのかかったような声に侮蔑の色がありありと感じられる。
「当たり前だ。俺様のハイパー兵器を見たら、女なら必ず股を濡らす。」
「そーだよ、ランスのはちょーーすっごいんだから。
アジア+白人だよ、アジア+白人!!」
・・・・・・再び沈黙。

「取引に応じないことも無いわ。・・・ただし、こっちにも条件がある。」
「心配するな、たっぷりと可愛がってやる。」
胸を大きくそらし、どんとたたく。
「違うわよ、一つ頼みがあるの。」
「なんだ、変態趣味でもあるのか?残念ながら、俺様はノーマルだぞ?」
「えーー、ランスってストレートなんだ〜。ちょーーぜつ意外〜〜」
まるで十年来寄り添った夫婦漫才師のように、2人に息はぴったりだ。
「違うって言ってんでしょ!・・・ある女の首を持ってきて欲しいのよ。」
「ム?」といって、ランスは戦士の顔に戻る。
「残念ながら、俺様は女は殺さん。なぜなら・・・」
言いおえる前に女の声がした。
「あら、そう。だったら、交渉決裂ね。さようなら。」
言うが早いか、前触れもなく大地を覆ういくつもの木の根が脈打ち始めた。
震える足場に2人は立っていられなくなる。
「ウワワワワワ、ちょ、ちょっと待て、分かった、分かった。」
慌てて、そう言うと揺れも収まった。
「分かってくれて、嬉しいわ。
その女は黒いショートカットでセーラー服を着てた。
あんたセーラー服、分かる?」
「フ、フン、俺様を誰だと思ってる・・・」
気を取り直して、得意げに答えるランスが言いおわらないうちに、
「そう、ならいいわ。そいつの首をここに持ってきて欲しいの。」





森の中に再び静寂が戻ってきた。
薄暗いうろのなかから話し声が聞こえる。

「・・・・・・行ったね。」
双葉の耳元に背後から優しく囁く。
「彼ら、ここに戻ってくるかな?」
後ろから抱きすくめると再び囁いて、
片手で梳るように双葉の髪を撫でる。
「別に、どっちだっていいのよ。ただなんとなく・・・ね。」
腰の辺りに回された腕に手を添えると振り返り、
優しく微笑むと無言で身をゆだねた。



【ランス】
【現在地:北の森】
【スタンス:女は食う(?)、男は殺る】
【武器:鎧(持参)、バスタードソード、棍棒のような枝】
【備考:ランスアタック回数制限】

【アリスメンディ】
【現在地:北の森】
【スタンス:飽きるまでランスとH】

【朽木双葉】
【現在地:北の森】
【スタンス:静観】




前の話へ 投下順で読む:上へ 次の話へ
123 追憶の澱み
時系列順で読む
122 逆襲するは吾にあり

前の登場話へ
登場キャラ
次の 登場話へ
119 何よりも大切な物 それを取り返す為ただ前進あるのみ
ランス
126 黒い心 冷えていく心 慕う心
アリスメンディ
084 七草出立
朽木双葉
123 追憶の澱み
初登場
????