119 何よりも大切な物 それを取り返す為ただ前進あるのみ
119 何よりも大切な物 それを取り返す為ただ前進あるのみ
前の話へ<< 100話〜149話へ >>次の話へ
下へ 第三回放送までへ
(15:45)
森の中を進む男女の影。
ランスとアリスメンディである。
音を立てない様、慎重に前を行く小さな影を追っていた。
どうやら、小さな影は南に向かっているようだ。
進む速度は人間の小走り程度か。
「ねね、ランス〜〜?」
小声でアリスは隣を進むランスに声をかけた。
「なんだ」
不機嫌そうに、ランス。
「あの式神、何のためにあんなもんとってんたんだろって
思ったり思わなかったり」
「…知らん。だが、あいつの飼い主が俺様の
ハイパー兵器を治せるんだろう? ならば問題ない」
むむ〜、と唸ってアリスが囁いた。
「でもあれ、薬草だよ。かびかびだけど、おくすり。
何でかなぁ〜〜?」
小さい声で、続ける。
「薬草ってことはさ、きっと誰か怪我しちゃったとか。
んでんで、もし、陰陽師な人がやられてたら、
ランス、ど〜すんの?」
「うむ…」
アリスの指摘に、ランスは渋い顔をする。
ランスもそこまでは考えていなかった。
隣ではアリスがむーむーうなっている。
暫く思案顔だったランスだが、いい考えが浮かんだのか、
「…よし」
「ん、ランスは何か思いついたのか?」
「恩を売って治して貰うか」
そこにはいつものいたずら小僧の笑みが浮かんでいた。
「もしその陰陽師とやらが動けないようなら、
俺様が治すのを手伝ってやろう。
それが他の奴でも、まぁ、同じ事だな。
その代わり、俺様のハイパー兵器を治して貰う。
そして、相手がうはうはの姉ちゃんなら、
俺様の治ったハイパー兵器でお礼をしてやればいい。
うむ、グッドだ」
相手の都合など一切考えない、ランスらしいといえば、
ランスらしい理論だった。
アリスもそこまで深く考えていなかったのか、
結論が出てしまうと、そこで考えるのをやめた。
「うん、そだね。そしたら、そのお姉ちゃんと、私と
ランスで3Pだ〜〜! やぁぁ〜ん!!
ランス、ちょーぜつえっちぃ〜〜!!」
「声がでかい」
興奮し、だんだん大きくなるアリスの声に、ランス。
アリスは思わず手を口にあてる。
幸い、前を行く式神には気付かれなかった様だ。
暫くの間、アリスは想像の世界で悶えていたが、
ふと、思いついた疑問を口にする。
「でもでも、相手が男だったらど〜すんのさ?」
「殺す」
即答だった。
「治して貰った後に、殺す。
怪我人なんざ、治ったとしても俺様の敵じゃねぇ。
男に用はない」
野獣の笑みを浮かべ、ランスは吐き捨てた。
そして、意志を固めたのか、きっと前を見て走り出す。
アリスもそれに続いた。
【2番 ランス・34番
アリスメンディ】
【現在位置:森中央部、更に南下】
【スタンス:陰陽師捜索を最優先に、他は変わらず】