112 雌伏
112 雌伏
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(PM:14:30)
「痛いのはいやだろーがよぉ?」
ここは森の北に広がる火山灰が敷き詰められた原野、
ただただ広く二人の姿をさえぎるものすらない。
遺作の当たり前な問いかけに少女は弱々しくうなずく。
「だったらよぉ!!」
「あうっ」
首に巻きつけてあるワイヤを
四つん這いになっていたさおりの膝が浮くほどに引き、
互いの顔をつき合わせる。
「だったら、俺の言うことにはおとなしく従ったほうがいーんじゃねぇのか?」
「でも・・・」
さおりの控えめな抗議を聞き、汗でぎらつく遺作のこめかみに青筋が浮かぶ。
「デモもヘチマもねぇ!!」
大量の唾を撒き散らしながらしゃがれただみ声でわめき散らすと、
ワイヤでさおりを引き倒し、彼女の左の手の甲を足で踏みつけた。
「いいか。 やるか、やらねぇかだ。 やらねぇのならぁッ・・・」
ズドンッッ!!
右手に握っていた日本刀をさおりの手のすぐそばの地面へと力任せに突き立てる。
「こいつで一本ずつ指を落とす。」
「ひっ」
思わず息を呑み、男の顔を見る。
冗談を言っている顔ではない。
「おれぁ別に穴さえ残ってりゃぁそれでいいんだぜぇ?
・・・3秒だけ待ってやる、決めろ。」
言い放つ、声が低い。
さおりは踏みつけられて動かせない己の手と無情な男の顔を交互に見る。
「3・・・・・・」
(どうしよう、しおりちゃん?)
(ど、どうしようって言われても・・・どうしよう、さおりちゃん?)
カウントダウンは容赦なく続く。
「2・・・・・・」
(このままじゃ指なくなっちゃうよ。そんなのいやだよぅ)
(でも、こいつ言うこと聞いて・・・『あんなこと』、ぜーーーーったいに出来ない!)
(でも、でも・・・しおりちゃん)
「1・・・・・・」
ジリッと刃がちいさな指のほうに移動する。
(だめぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!)
次の瞬間には少女の中からしおりは消え、大声で屈服の宣言をしていた。
「なんでもするから、それだけはやめてぇ・・・」
最後のほうは涙にのまれて言葉にならない。
「お〜お、よしよし、そんなに泣かなくてもいいんだぜぇ。」
先ほどの怒りはどこへやら、一転していやらしく破顔する。
そして、涙に濡れた血の気のない顔をベロリと舐め上げる。
「最初から言うとおりにしてりゃ怖い目にあわなかったんだぜ。
俺は自分のものは大事にするタチだからなあ。」
遺作の戯言を聞いているのかいないのか、
さおりはこれから行うであろう『あんなこと』を思ってうなだれ、
瞳に大粒の涙をたたえて震わせている。
「じゃあ、さっそくやってもらうか。」
・・・・・・抜けるように青い空の下、
・・・・・・火山灰をベッド代わりに寝そべる自分とは祖父ほどの年の差のある男。
・・・・・・その男の股間の前に四つん這いになってひざまずくと・・・・・・
・・・・・・・・・さくらの花のように可憐な唇を
・・・おずおずと遺作の後ろのすぼまりに近づけた。
「ふぃ〜」
遺作は大きく息を吐き出し、満足げに目を細める。
「やっぱり真昼間から青姦ってぇ〜のはいーい気分だぜぇ。」
言いながら腰をトントンとたたいては背筋を伸ばす。
傍らには陵辱の証も生々しくさおりがうつぶせのまま倒れており、
その全身に飛び散った体液と荒い息が行為の激しさを物語っている。
「さーて、こんな人目に付くとこにいつまでもいるはバカのするこった。
オイ、たたねぇか。」
「あ・・・う・・・」
どんよりとにごった目を動かすだけで、言葉にならない。
「へへへへへ、そんなに俺のびっぐ・まぐなむが気に入ったのか?」
にやけて相好をくずす。
「だがよぉっ!!」
「アウウウウッ!」
次の瞬間、遺作の足はさおりの背中を容赦なく踏みつけていた。
「どんなときでも、
ご主人様が立てと言ったら何が何でも立つのが、
奴隷の『心構え』ってもんだろーがよぉ?」
泥まみれの靴底で踏みにじられた小さな背中は赤みを帯びていく。
(さおりちゃん、頑張って。
こんなやなやつなんかに負けちゃダメなんだから!)
(うん、でも、いたいよぉ、しおりちゃん・・)
よわよわしい反論を聞いてしおりは口ごもってしまう。
(・・・どうしたのしおりちゃん?)
(ゴメンね。さおりちゃんにばっかり辛い思いさせて・・・)
しょんぼりと落ち込むしおりに何か言おうとするが、
肺が押しつぶされるような感覚に思わず口をつぐんでしまう。
(・・・そ、そんな、いいんだよ。しおりちゃん)
何とかこれだけのことは言えた。
(ううん、よくない。 絶対によくないよ!
私とさおりちゃんはいつでも一緒、
うれしいこともいやなことも、いつでも一緒だよっ!!)
この島に来てから何度泣いたろうか、
にごっていたさおりの目に少し光が戻り、ほおを涙が伝う。
(うん・・・、そうだね。ありがとう、しおりちゃん。
きっとふたりで帰って、もう一度おにいちゃんに会おうね。)
しおりが嬉しそうにうなずいて消えた。
「へっ、踏みつけられてんのに涙流して悦んでやがるのか?
末恐ろしいがきだぜぇ。」
踏むことに飽きたのか、穏やかな笑みを浮かべるさおりに侮蔑の言葉を投げかける。
「しっかし、俺のせーえきですっかり臭くなっちまったなぁ。」
ぶあつい唇をだらしなくゆがめ、胸元の傷をまさぐる。
「チッ、まだとまんねえぇのか。」
べったりと血がついた指先を見て、遺作は少し不機嫌な顔をした。
【遺作】
【現在地:荒地】
【スタンス:女は犯す】
【武器:日本刀、連射式モデルガン】
【備考:被曝】
【さおり】
【現在地:同上】
【スタンス:生き残っておにーちゃんと再会】
【備考:二重人格(しおり)
:右手親指・人差し指骨折
:右足に裂傷→移動難】