096 グレン様、暴走する

096 グレン様、暴走する


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(一日目 13:17 灯台内の一室)

「(ぴらっ)……何コレ?」
「ハッ、こんな事も理解できんのかね?これだから(すぱあんっ!)……
 ……デ、データを元にしたこの世界の構造図だ」
「……コレが?」
再びグレンが描いたそれを見る。
「………(じいぃぃぃ……)」
「何故私を哀れむように見る!?」
「グレン、貴方……脳、大丈夫?」
それは、どうお世辞に見ても現代人の書いた図面ではなかった。
図の中央に大きな目玉焼きが描かれている。
どうやら黄身に当たる部分がこの島で、白身は海を示しているらしい。
「どういう意味だっ!?」
「言葉通りの意味よ!冗談にも程があるわっ!」
「冗談ではないのだよッ!冗談ではッ!!」
触手をブンブン振って力説するグレン。
「間違い無く、この世界は平板になっている!しかも……この世界には
 この島しか陸地は存在していない!!」
「……マジなの?」
「本気と書いてマジと読む位本気だっ!!」
そのグレンの焦りっぷりに、流石にまりなも真面目になる。
「………」
「いいかね!この島の存在する位置は本来の地球ならばユーラシア大陸
 南西部、すなわち中国の真ん中辺りの筈なのだっ!それに加えて太陽の
 移動速度が……!」
声高に喋るグレン、対して一方のまりなは無言で天井を見詰めている。
「……ミス法条ッ、聞いているのかねッ!?」
「……ねえ、グレン」
「ん、何だね?」
「誰が……そんな芸当ができると思う?」
既にまりなの思考は次の段階に移行していた。
すなわち、ここが別世界とするならば―――誰が、何の為に行ったのか。
そして、その結論はあっさりと出た。
―――あまりにも馬鹿げた結論ではあったが。
「そっ、そんな事分かる訳……」
「考えて!全く違う筈の言語疎通を可能にして、世界を丸ごと一個作れる奴!
 誰がいる!?」
「む、むう……それは無論神のような……」
その瞬間、グレンの表情が一変した。怯えるような表情で彼女を見る。
「………ま、まさかミス法条、そんな訳は………」
誤魔化すようにへらへらと笑うグレンに、まりなはため息を一つゆっくりと
吐き出して言った。
「………ええ、多分………アタシ達の敵は、神様よ」


数秒の嫌な沈黙が流れた。
「…………ハハ、バカな……ハハ………」
グレンが力無く笑う。
彼とてそれに気付いていなかった訳ではない。ただ―――認めるのが恐かっただけだ。
「それ以外の可能性、ある?まあ、どこぞの大金持ちが太平洋級の巨大ドーム
 を作って、そこにアタシ達を入れてるって案もあるわよ。―――この場合、
 言葉については説明できないけど」
「で……では何故!?」
「さあね……でも、これではっきりした事があるわ。……連中がアタシ達の
 やってる事を無駄だと思ってる訳。そりゃ神様が後ろにいれば強気にもなる
 ってものよ……」
そう言いながらも、まりなの瞳からは未だに闘志が見える。
「だからって……はいそうですか、従います……とは行かないわよ……!」
まりなは怒っていた。この馬鹿げたゲームその物に、そしてその背後の主催者達に。
まりなはかつて自分が担当した、国一つを動かした事件の事を思い出した。
大人達の欲望と狂気の為に、死者の依代として生きる事を強要された少女の事も。その少女を救えなかった自分の不甲斐なさも。
もうあんな思いはごめんだ。まりなはその想いによって立っていた。
―――だが、グレンは?
「………無理だ………」
微かな呟き、それは呪文のように繰り返され、次第にその大きさを増し―――。
「無理だ……無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だッッッ!!」
部屋全体に響く絶叫となった。
「無理だッ!ハハハハハッ、勝つ!?神に!?無茶だ、無謀だ!」
「やってみなきゃ分からないわ!第一グレン、アンタ普段自分の事神様扱い
 してる癖にこんな時だけ凡人顔しないでよっ!」
しかし、まりなのその言葉は既にグレンの脳には届いていなかった。
ここでグレンの現時点での思考回路を解説しよう。

・『G・S・V3』での脱出はもはや不可能。
           ↓
・相手が神ならば例え首輪が解除できても無駄。
           ↓
・今からでも生き残るスタンスに変えればOKかも。
           ↓
・では、手始めに……。


―――血走った瞳が、まりなを睨んだ。
「え?」
まりなが言葉を発する前に触手が素早く動く。
「なっ!?」
その動きは、今までまりなが見なれていた触手の比ではなかった。
一瞬の内にまりなの両手足を縛り上げ、高々と持ち上げる。
ぬるぬるとした粘液がまりなを濡らしてゆく。
「ちょ……グレン!なんのつも……キャアッ!?」
ビリィッ!
それでも何とか抗議しようとしたまりなの言葉は、グレンの更なる行為によって
遮られた。
スーツの前面が荒々しく引き千切られ、ベージュのレース下着が露わになる。
「コッ、コラッ!いい加減に……!」
「……ククッ、ククククク……」
グレンは、麻痺しかかった思考の中で優越感に浸っていた。
もはやこの女の運命は私の掌中にある。
生かす事も、殺す事も、犯す事も。
犯す事も?
犯す事も!
ギリッ!!
「くっああッ!」
苦悶の悲鳴をあげるまりな。その声がグレンの官能を更に刺激する。
もっとだ、もぉぉぉっとだっ!
私に許しを乞え、喘げ、苦しめっ!
ニチャ……プツッ。
触手の先端がまりなのブラに伸び、前のホックを外す。
ぷる……ん。
「やっ……!」
まりなの豊かな、それでいて張り切っている乳房が揺れた。
「ほう……まだピンク色か……遊んでいるように見えたのだがな……」
「…………ッ!」


グレンの辱めの言葉に紅潮するまりな。
ヌルッ……タプン……。
ニチャ……プルッ……。
「んっ……やっ………ダメぇ……」
既にまりなはすっかり抵抗する力を失っていた。2本の触手がゆさゆさと彼女
の美乳を弄る。
「ククク……何だ、貴様も所詮雌犬か……幻滅だな……」
嘲りを込めつつグレンは更に一本の触手を伸ばす。今度はまりなの下半身に。
「ッッ!だっ、駄目ッ!!」
「なにがダメなのだね?本当は欲しいのだろう?」
ズルッ……!
太い触手がまりなの脂の乗った太股の間に分け入る。
「嫌あっ!」
「……んんん〜〜〜!いい、実に良い悲鳴だ!」
ズリッ……ズリッ……
「いっ……嫌……嫌ぁ……」
「嫌ではなかろう?これから神の体を味わえるのだからな……」
そして、グレンはショーツの中に触手を―――


「………はい、そこまで♪」


その時、まりなの顔に不敵な笑みが浮かんだ。
同時に彼女の右手が微かに動き、コートのポケットから何かが落ちる。
瞬間、グレンの目が見開かれた。
「なあっ!?」
それは、かつて軍医であったグレンにとっても見慣れた物体であった。
―――手榴弾。
見れば、手榴弾とまりなの右手の指輪がテグスで結ばれていた。
しかも、ご丁寧に手榴弾のピンに。
「一つ教えといてあげる……女の操は高いのよ♪」
さも愉快そうに笑うまりな。
「バッ、バカなあっ!心中する気かっ!?」


グレンはかつて読んだ日本文化についての本を思い出した。
カミカゼ・アタック。
『誇りを何より尊重する日本人は辱めよりも死を選ぶ』と。
「わたたたたたたたっ!」
慌ててまりなの触手を解き、後ろに飛びのこうとするグレン。
「甘いわよッ!!」
着地と同時にピンを戻し、床を蹴る。
―――1秒後、まりなのドロップ・キックがグレンの顔面を直撃した。
「はぎゃあああああぁぁぁぁぁッッッッ!!!」
盛大に鼻血を吹き出しつつ、コンクリートの床に叩きつけられるグレン。
がすっ!
その頭部に更にヒールの踵が打ち込まれる。
「のほおおおぉおぉぉぉぉっ!!」
ぐりぐり……!
「なかなか良い動きだったわよ、この調子で首輪の解析もお願いね♪」
微笑を崩す事無くヒールを食い込ませるまりな。
「はがががががががっ!」
「はい、お返事は?」
「おっ、おのれぇっ、あと一歩で………」
ガスガスガス!!
容赦ないストンピング。
「にゃっ、のっ、とおっ!?」
「……お返事は?」
「わっ、分かったっ!もうしないから足をどけてくれえェェェッッ!」


「首輪の解析、してくれる?」
「するっ、何でもするッ!」
「はい、よろしい♪(ひょい)」
ようやく足が上げられ、ふらふらと立ちあがるグレン。
「ううっ、なんと乱暴な……」
「アンタよりはマシよ」
そう言いつつ、まりははグレンに明るく微笑んだ。
「……期待してるわ、グレン」
ちゅっ。
「!?」
軽いキスがグレンの頬に触れる。
「ななっ!?」
何故か赤面するグレンに悪戯っぽく笑うまりな。
「―――アンタだけが頼りなんだから」
「あっ、あ……ああ」
呆けたように答え、グレンはよたつきつつ出ていった。
(―――犬の躾にはアメとムチのバランスが重要、ってね)
内心でグレンに言葉を送り、まりなは服を拾い上げる。
とりあえず代わりの服があるかどうか、それが彼女にとって最大の問題であった。



                【法条まりな:変化なし】
                【グレン・コリンズ
                      :まりなへの忠誠心アップ】




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092 オコジョのハルは、みんなに助けてもらってばかり。今日も病院でおるすばん。「さみしいなあ、さみしいよお」だからハルは、一緒に頑張ろうと思いました。みんなと、本当のお友達になるために。
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