082 海でガッツ!と青くない果実たちの散花

082 海でガッツ!と青くない果実たちの散花


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(1日目 12:01)

まひる(No.38)の震える唇が真人(No.17)の男根に触れようとした、正にその時だった。
 ぎぃ……
漁具倉庫のドアが少しだけ開いたのは。
「誰かいるのか!?」
紳一(No.20)が動揺を隠し切れないやや甲高い声で問いかけるが、返答はない。
「いちいちビビんな、風だろ? 扉、閉めなおしてくれ。」
「ここから扉まで、7メートル以上ある。真人も来なければ閉められない。」
「ち、これからって時によ……」
端正な顔をした2匹の淫獣は相憐れむかのような視線を交わし、肩を並べて扉へと向かう。
まひるには知る由も無かったが、この2人はお互いの身を、他爆装置という名の見えない鎖で縛られているのだ。
3メートル以上離れることは、即、どちらかの死に結びつく。

扉を閉めなおした2人は、まひるが何かを考える間もなく、戻ってきた。
「すまねぇな、お預け食わせちまって。」
欲情に濡れ光る瞳でまひるを睨み、真人がそう口にした時、
 ぎぃ……
またしても扉が再び開いた。
「……建てつけ悪ぃな。」
「やはり、誰か居るのではないか?」
再び立ち上がり、扉へ向かう2人。
「……誰も居ねえぞ。ビビり過ぎなんだよ、紳一は。」
倉庫から顔を出し、キョロキョロやっていた真人はそう結論付け、扉を閉めなおした。
「すまない。私が神経質すぎ」
 ガシャン!
今度は、扉とは反対側の壁にある窓ガラスが割れた。
飛び散ったガラス片に一つだけ小石が混ざっている。

「マジかよ……」
事ここに至っては、真人も気のせいとは言っていられない。
再度まひるに猿轡をかませ、首をコキコキと左右に振ると、
「逃げようなんて思うんじゃねぇぞ。」
脅しをかけてから、紳一と共に倉庫を出た。


倉庫を出てすぐ、紳一は倉庫の北側の角からこちらの様子を伺っている男と目が合った。
角張った顔に、蓄えられた口髭の壮年と。
その男、堂島薫(No.7)は、すぐに倉庫の陰へと引っ込んでしまった。
「真人、北に男が!」
「追うぞ!」
真人は言うが早いか、薫目掛けて駆け出し、紳一も慌ててそれに続く。
だが、6秒ほど後に倉庫の北の角に到着した時には、薫の姿はもう見当たらなかった。
「ち、逃がしたか……」
「まあ、逃げたなら逃げたでいいのではないか?
 我々を脅かす存在ではないとわかったのだから。」
「ま、それもそうだな。」
2人がそうして薫の追跡を中止しようとしたとき。
「わるものめ、おかーたまをいぢめるな!!」
また、倉庫の西角から薫が姿を現した。
赤いふんどしと高級そうな革靴だけといった、妖しげな格好で。
「まだ居やがる!」
「止まれ!止まらんと撃つぞ!」
薫は、紳一の警告を無視して逃げる。今度は南に。
「紳一、俺が追う。お前は向こうから回りこめ。挟み撃ちだ。」
「私もそうしたいが……お前とは離れられない。」
「くっ……」
「それに、ヤツの動き、何か妙ではないか?
 まるで」
時間稼ぎでもしているかのような。
その言葉を言い終わる前に、真人は薫を追い、駆け出してしまった。
追い詰めることに快楽を見出す真人は、既に狩猟モードに入っていたのだ。
「まて真人!私を置いていくと指輪が……」
なにやら嫌な予感を胸に、紳一も真人を追う。


(たいへんだぁ……何とかしなきゃ、何とかしなきゃ……)
2人が外に出て行ってから、まひるはずっと縄を解こうと努力していた。
しかし、どう腕を動かそうと、どう体をよじろうと、それは解ける気配を見せない。
それどころか、動かせば動かすほど荒縄は皮膚を傷つけ、手首の何箇所かは擦過傷から出血していた。

「おかーたまを……いぢめるな……」
倉庫の外から、息切れ寸前の、それでいてとても強い意志が感じられる声が聞こえてくる。
さきほどから何度も耳にしているその言葉は、聞くたびに息が乱れ、苦しげなものになってきている。
今の所まだ逃げ続けているようだが、熟年の体力では、若い2人に捕まってしまうのは時間の問題だろう。
(あたしのことはいいから逃げて!薫ちゃん……)
(ああ、あたしに力があったら……)
(助けたい……)
(縛を……)

 ザンッ。

(……え?)
どうもがいても解けなかった戒めが、解けていた。
特にどこかを動かしたわけではない。
強いて言うなら、今までで一番強く「縛を解きたい」と願っただけだ。
(そーいえば知恵の輪とかでも、考えてるときには外れなくて、
 なんか「もーダメだぁ」って適当にカチャカチャやりだした時に外れるもんだよね、なんでか。)
そんなことを思い浮かべながら、まひるは解かれた縄に目をやる。
「?」
その縄は、解けていたのではなく、切断されていた。
(どうして……?)
一瞬、理由を探ろうと考えたまひるだが、
(そんなの、あとあと!!それよりも薫ちゃんを助けないと!!)
そう思い直しグロック17を拾うと、その場で天井に向けて一発。

 パン!!

「薫ちゃん、逃げてぇ!!」


「ありゃ……チャカだ!」
視界の先にある漁具倉庫から聞こえて来た放銃音を耳にしたタカさん(No.15)は、
「うおおぉぉぉおお!!まひるっっ!!」
土煙すら上げながらダンプカーの如く倉庫に向かう。

このタカさんの到着は、決して偶然ではなく、薫の誘導によるものだ。
今から30分と少し前……

「ち、雨かよ……」
相変わらず反応のない浮きをだらんと眺めていたタカさんは、頬にあたる冷たい感触に顔を顰めていた。
(昼飯食いに戻るまでに、1匹くれぇ釣れて無いと、面目が保てねぇよなぁ。)
そんなことを考えていた彼女には、この雨はたまらなく鬱陶しいものだった。

 コーーーーー……

一定したリズムの軽い音が、背後から聞こえてきた。
「ん?」
徐々に近づいてくるその音に振り返ったタカさんの目に映ったものは、走り寄るジンジャーだった。
ただし、無人の。
「どーいうこった?」
嫌な胸騒ぎを覚えた彼女がジンジャーに歩み寄ると、そこには2つほどの雨ざらしのブロックが乗っており、
それに挟まれる形で、一枚のメモがあった。
『おかーたまがさらわれた』
「まひる!!」
タカさんは釣具を放り投げ、駆け出す。
ぼしゃん。
背後でジンジャーが、海に落ちる音が聞こえた。

500メートル以上ある防波堤から港まで全力疾走で戻ったタカさんは、そこに薫の背広を見つける。
30メートルほど西には、今度はズボンが落ちていた。
それらは強風に飛ばされないように、何らかの重しが乗せられていた。
「そうか、そういうことか……」
こうしてタカさんは薫の脱ぎ捨てた衣服を目印に、漁具倉庫まで真っ直ぐ向かうことになり。

そして、今……


「あのヒゲオヤジ……馬鹿にしやがって!!」
憎々しげに吐き捨てる真人。
よく分からないうちに、彼らは薫に倉庫を丸々3周させられ、今は東側の壁面まで戻ってきている。
「待て……私はこれ以上走れない……」
体の弱さと日頃の運動不足が祟って、すでに息も切れ切れな紳一が真人に言う。
その時。

 パン!!

倉庫内という予想外の場所から聞こえてきたその音に、真人は判断に迷う。
「ぜぇぜぇぜぇ……」
酸欠で既に意識が朦朧としつつある紳一は、銃声に気付いていないようだ。
それに続き、今度は港方面から、
「うおおぉぉぉおお!!まひるっっ!!」
雷鳴のような怒号が聞こえて来た。
 どどどどどど!
筋骨隆々の巨漢がこちらに向かい、猪のような勢いで突っ込んでくる。
「くっ!」

真人はまず、迫り来るこの巨漢をなんとかする必要があると判断し、紳一の手からガバメントを取り上げると、
タカさんに向けて、それを構えた。
「近づくんじゃねぇ、止まらねぇと撃つぞ!」
しかし。
「うぉおおおおお!!」
血走った目のタカさんは、まるで止まる様子を見せず、真っ直ぐ駆けてくる。
その距離、10メートル。
「止まれっ!撃つぞ!」
その距離、5メートル。
「聞こえんのか!?撃つ」
目と鼻の先。
「な!?」
タカさんは勢いを緩めること無く、真人と紳一に突っ込んだ。
そして、一顧だにすることなく駆け抜ける。
それは、軽4とダンプの正面衝突のようなものだった。
「うぎぇ!」
「はーん……」
2人は手を繋いだまま、弧を描いて吹っ飛んだ。
……その意識は、さらに遠いところまで吹っ飛んでいた。

タカさんの頭の中にはまひるのことしかなかった。それだけで手一杯だった。
だから、まひるに向けての最短距離を、最速で駆けた。
彼女には銃など……いや、2人の存在すら、障害物のひとつとしてしか映っていなかったのだ。石ころと同程度の。


「タカさん……」
小屋に飛び込んだタカさんは、グロック17を片手に脱力しているまひるの無事を確認すると、彼を抱きしめた。
その逞しい腕で、不器用な優しさを込めた力強さで。
「あの……ちょっと苦しい。」
タカさんは無言で抱きしめ続ける。
激しく脈打つ鼓動。荒い呼吸。立ち上る湯気。汗と雨でずぶぬれのタンクトップ。腕と胸の圧力。
そして、鼻を啜る音。
まひるは腕の中から、そっとタカさんを見上げた。
「タカさん、泣いて……」
「見るんじゃねぇよ、バカ野郎。」

「おかーたま!!」
そこへ、薫が飛び込んできた。
タカさんとまひるの間にぐいぐいとその身を割り込ませると、
「ヒヒ……薫もだっこ!」
無垢な笑顔で2人に甘える。
「薫、グッドジョブ!」
タカさんは薫に向かって、ばちりとウインクを決めると、
「おとーたまも、ぐっじょ〜ぶ!」
薫も、ヒヒ、と笑いながらタカさんに返した。

……ままごとの家族は、ままごとを超えた確かな絆で結ばれた。





おしおき

(12:26)

「なんでぇ、ただの強姦目的か。焦って損したぜ。」
縛り上げられている真人と紳一は、タカさんの言葉に耳を疑ってしまった。
「こいつら結構かっこいいしよ、ヤらせてやりゃあよかったのに。」
まひるは経験上、彼女のその言葉は冗談などではないことを悟る。
「あはははは……謹んで遠慮させていただきます。」
「じゃあ、アタシがもらっちゃうぜ?」
「あ、どぞどぞ。」
まひるがそう返事したときには、タカさんすでに全裸になっていた。

猪のような首。こんもりと盛り上がった両肩。
良く発達した胸筋の上にでんと乗っかる乳房の下には、ぼこりぼこりと6つに割れた腹筋が並んでいる。
そして、特筆すべきは臀部。
お尻とかヒップとか言った軟弱な曲線を持っていない。
ケツ。
角張ったそれは、余りにも見事に、ケツでしか無かった。

「お前たちは精子が余ってるから、強姦なんていうバカなことをしちまうんだ。
 このタカさんがキッチリ粉まで搾り取ってやるから、更正するんだぜ?」
「い、嫌だ……」
圧倒的な恐怖感と敗北感に身を震わせながら、真人は許しを乞う。
「はっはっは。嫌よ嫌よも好きのうちって言うだろ?」
豪快に笑ったその口にばくりと、萎縮する真人のものを咥えるタカさん。
「えひぃっ!!」

 にゅちゅわっ、ぐぉぷぐぉぷ、じゅろおぉっ!!
 にゅちゅわっ、ぐぉぷぐぉぷ、じゅろおぉっ!!

いやらしさを軽く踏み越えたディープなフェラ音があたりに響いて、数秒。
「ほら、もう勃っちまった。」
タカさんは勝ち誇ったように真人に目線を送る。
「ああ……なんで勃つんだ、勃ってしまうんだ……くっ……」
真人の体は「もっともっと」と快楽を求め、心は「いやだいやだ」と悲鳴をあげている。
紳一は未だ整わぬ息で、その様を魅入られたように眺めている。
「そろそろ頃合かね?」
タカさんは真人のものをピンと軽く弾くと、強引に仰向けにひっくり返し、その上に跨る。
「紳一〜〜〜っっ!!」
叫びと共に、タカさんの良く熟したそこが、真人の反り返ったそれを丸呑みにした。

 ぎゅももももも……

「あぁ……」
真人は絶望の吐息を吐く。
(……終わった。)
その無力感が周りのものにヒシヒシと伝わってくる吐息を。
「はっはっは! いい感じだ。」
タカさんは大臀筋の見事に発達した自らの臀部をパンパンと叩いて位置を微調整した後、
「次はこっちだな。」
ニカッと爽やかな笑みを、紳一に向けた。


「あひゃぁぁぁぁああ〜〜〜〜っっ!!」
その恐ろしい笑顔でようやく我に帰った紳一は、後ろ手に縛られた格好そのままに、
一目散に駆け去ろうとした。
しかし、その逃走は彼のパンツを引く何かによって阻まれる。
「ひほりれにへるひは!?」(1人で逃げる気か!?)
彼を抑えているのはタカのさん手ではなく、相方・真人の歯だった。
パンツの裾に噛み付いている。必死の形相で。

「ほれはひはひっひんろうはいらろ?」(俺達は一心同体だろ?)
「行かせてくれ真人!!
 ここで辱めを受けるくらいなら、私は栄光ある爆死を選ぶっ!!」
「ほはへがひぬらへならほうふるは、はふはふふるのはほれらたらろうふる?
 ふほうすひるらろうはっっ!!」
(お前が死ぬだけならそうするが、爆発するのが俺だったらどうする!?
 不幸すぎるだろうがっっ!!)
命と誇りを賭けて、2人の監禁陵辱魔は激しくマヌケな舌戦をしばし展開するが、
「はっはっは。まあ、細けぇことは気にすんな。
 2人とも満足するまでちゃんと可愛がってやっからよ。
 このタカさん、男の生理にゃ理解があるんだよ!!」
という、まるで解っていないタカさんの言葉に収束してしまう。

タカさんは腰の動きを緩めることなく、器用に紳一のジッパーを下ろす。
「お願いだ……やめてくれ……見ないでくれ……」
「んあ、お前……」
……驚くべきことに、紳一の中心はいきり立っていた。
彼の名誉の為に述べるが、その反応は決してタカさんの肉体に触発されたものではない。
外見には少女のようにも見える端正な顔立ちの真人が、泣き叫びつつも快楽を感じている様子に、
どうしようもなくサディストの血が反応してしまったのだ。
「紳一、お前って奴は……」
「言うな!言わないでくれ……頼むから、何も……」
紳一の目尻から、涙が一筋、流れた。

「まひる、欲しけりゃ遠慮するな?」
「いらないいらない、全然いらない。」
「そっか、じゃ、こっちもアタシが貰うぜ?」
そう言いながらタカさんは腰を浮かせ、深く刺さっている真人のものを抜き取ると
四つんばいの格好でケツを高く掲げ、膝を付き力なくうなだれる紳一のものに照準を合わせた。
「あ、あははははは……お手柔らかにね、タカさん。」
まひるは引きつった笑みを浮かべながら、薫と共に倉庫を出て、ぱたりと扉を閉める。
「置いてかないで〜〜〜〜っっ!!」
どちらのものともつかないが、どちらのものでもある、魂の叫びを背に。

 ……はらり。

こうして、別に青くもない果実が2つ、散花した。





変化

「おかーたま、だいじょうぶ? けが、ない?」
薫は心配げに訊ねる。
「うん、大丈夫。お母さん、大丈夫だから……
 ありがとうね、本当にありがとうね……」
まひるはそう言いながら、その薄い胸に薫の頭を抱き、繰り返し、繰り返し頭を撫でる。
「ヒ、ヒヒ、ヒ」
もじもじと、嬉しそうに笑う薫。

(タカさんも薫ちゃんも、あたしを助けに来てくれた……
 もしかしてあたしってば、愛されちゃってる?
 でへへぇ……)
不謹慎だとは思いながらもお姫様気分に酔っていたまひるは、堂島の独特な笑い声が
いつのまにか聞こえなくなっていることに気付く。
「薫ちゃん?」
「すぅ……すぅ……」
母の胸で安心感を得たのだろう。
幼いナイトは、満足げな笑みを浮かべて眠っていた。
まひるは膝枕の体勢に移ろうと、彼の頭をそっと包み込み……
「!?」
……息を飲んだ。
そして、縄が切れた理由を理解した。
視界に映った自身の左手には、禍々しい光を放つ真紫の爪が、優に5センチ以上伸びていたから。
そして、それがワサワサと動いていたから。指を動かしていないのに。



                 【グループ:タカさん(No.15)、まひる(No.38)、薫(No.7)】
                 【現在位置:漁具倉庫】
                 【まひる】
                 【能力制限:天使化進行。爪は鋭利な刃物並】
                 【所持武器:グロック17:弾16】
                 【薫】
                 【所持武器:M72A2】

                 【グループ:真人(No.17)、紳一(No.20)】
                 【現在位置:漁具倉庫】




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