105 堕ちた誇りを取り戻せ
105 堕ちた誇りを取り戻せ
前の話へ<< 100話〜149話へ >>次の話へ
下へ 第三回放送までへ
(1日目 13:55)
その2人は港の西の外れでそっと肩を寄せ合い、揺れる波を見つめていた。
膝を抱え、小さく背を丸め、体育座りをしていた。
そこには、傍目で見た者の胸すら締め付けてしまいそうな、淀み沈んだ空気が漂っていた。
「真人……」
「……」
「俺達は、弱いな」
「……ああ」
タカさんにお株を奪われたというか、格の違いを見せ付けられたというか。
今まで自分たちが散々行ってきた狼藉のダイジェスト版を、こってり&ずっぽり体に刻み込まれ、
屈辱に沈み込んでいる17番 神条真人と20番
勝沼紳一だ。
「女どもは―――こんな思いをしていたのだな」
「……」
「悔しさと怒りに心を燃やしても、体に与えられる痛みと快楽に強く支配され、
やがて失望と無力感が満たしてゆく……」
「……」
「因果応報、か……」
筆舌に尽くし難い屈辱のひとときを思い出したのか、じわりと涙を浮かべる真人。
自嘲に口元を歪ませ、はははと乾いた笑いを零す紳一。
そしてまた、沈黙のヴェールが2人を覆う。
正午に比べ幾分柔らかくなった潮騒が、2人を包み込む。
その時、
「……キャアアアアアアアアァァァァァッッッ!!!」
西風が少女の悲鳴を運んできた。
「女の声だな」
「……ああ」
「殺されそうになっているのだろうか」
「……」
「それとも、犯されそうになっているのだろうか」
「……さあな」
「―――どちらにしろ、我々には関係の無い話か」
紳一はまた唇を歪め、真人は悲鳴が聞こえた方向に黙って顔を向けたままだ。
普段の彼らであれば一も二もなく飛び出しているところだが、
(また、怖い目に会うのではないか)
(次は殺されるかもしれない)
拭い去れない恐怖感が植え付けられた今、彼らはそう怯えてしまうのだ。
しかし―――真人は顔をゆっくりと紳一の方向へ向け、噛み締めるように言った。
「……いや、行こう、紳一」
その表情は真剣そのものだった。
「行ってどうする?」
「……犯す」
「本気か?」
「このままじゃ、俺たちはダメになる。
陵辱によって失われた誇りは、陵辱によってしか取り戻せねえ。
だから……犯す」
「……無理だ」
紳一は吐き捨てるようにそう言うと、責める様な口調で続ける。
「お前は、出せるのか?」
「それは……」
「90分で7本も搾り取られて、それからインターバルが30分とない今、
お前は陵辱の証であるところのザーメンを放てるのか?
赤剥けて触らずとも痛む陰茎を立たせ、突っ込み、摩擦させることが。
途方もない虚脱感に沈む睾丸で精液を製造し、沸騰させることが。
疲れ果て、傷を負った心でSEXに快楽を得ることが出来るのか!?」
「わからない―――未だかつて、これほどの精力を消耗したことはねえからな。
だが、出す。出してみせる。
たとえ粉しか出ないとしても、赤玉が出るのだとしても。
俺の誇りを取り戻すために、犯す」
「誇り……」
「そう、誇りだ。陵辱されたままじゃ鬼の監禁陵辱魔の名が廃る。
お前もそうだろう? 処女膜50枚破りの鬼畜だろう?
だから行こう、紳一。俺達が俺達を取り戻すために」
真人の鼓舞に、紳一は迷う。
その迷いを打ち消すかのような真人の強い目線が、紳一を射抜く。
「……そうだな。
あの叫び声には、処女の気配が感じられた。
であれば、彼女を女にしてやるのが私の役目だからな」
「直感だが俺も、あの女は妹の死に関係している気がする。
だから、陵辱して、剃毛して、浣腸して、拷問して、中出しして、妊娠させてやる!!」
―――こうして失意のどん底にある2人は、立ち上がった。
言葉の不敵さとは裏腹に、その顔に余裕は無い。
よく見ると膝も震えている。
恐怖感がまだ2人を苛んでいる。
それでも2人は進む。
己の足で、再び前に進むために。
失われた誇りを、取り戻すために。
ま、ありていに言えば女を犯しに行くだけなんだが。
【No.17 神条真人 No.20 勝沼紳一】
【現在位置:港 → 磯】