020 東ドイツ国歌はいつも唐突に
020 東ドイツ国歌はいつも唐突に
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(一日目 4:00)
学校の北に広がるうっそうと生い茂った森。
その中央部に巨大な楡の古木が、森の主よろしくどっかと腰を下ろしており、
周囲は少し開けた草原になっていた。
紫のストレートロングに黄色いキャップをかぶったスレンダーな少女、
16番朽木双葉は、その巨木にもたれかかりながら、
両手に抱えた、黄色い小さな花を咲かせた鉢植えを相手に、愚痴を零している。
「てゆーかさ、こけしぃ。
こーゆーヒロインのピンチにこそ、白馬の王子様って駆けつけるものだと思わない?」
……彼女の配布武器は『植木蜂』だった。
それを始めて見たとき、思わず、
「ふざけんじゃないわよ!!」
と怒鳴ってしまうほど頭に来たものだ。
しかしその数十分後、森の中でこの花『こけし』に出会ったときには
「もう、サイコー!」
と全く逆の感想を述べながら植木蜂に移植したのだが。
双葉の愚痴は、いつのまにか夢想へと変わっていた。
「あ〜あ、アタシをさらっていってくれないかなぁ。」
「がはははは、それはちょうどいい。
この俺様がさらっていってやろう。」
「え?」
緑色の鎧に赤いマントを身につけた時代錯誤な青年が、双葉の元にスタスタと歩み寄ってくる。
2番ランスだ。
「はぁ?
アンタみたいな自信過剰野郎なんて願い下げよ。
出直して来な、しっし。」
めんどくさそうに手のひらをひらひらさせる双葉。
「かーーーーーーっ、その志津香みたいな態度、むかつくむかつく!
お前のような生意気コムスメは、ハイパー兵器で更正してやらにゃならん!」
ランスはいきなり、すぽぽーーーーんと身に纏っている全てを脱ぎ捨てた。
「え、あ…… な!?」
余りの展開の速さというか強引さに狼狽する双葉。
ランスの股間のものは、すでに臨戦状態だ。
「こ、こけ」
「がはははは、とりゃ!」
双葉は何かを言いかけたが、すぐにランスの唇で唇を塞がれてしまった。
ナマイキな女は、このランスさまがちょっと舌を入れただけで、もうメロメロになってしまった。
半眼で見下していた目がとろんと霞んで俺様を見返す。
がはは、さすがは俺様のテクだ。
そこいらの包茎野郎とは年季も効果も違う。
♪ちゃっちゃっちゃっちゃん、ちゃっちゃっちゃっちゃん
どこからともなく軽快に流れてくるブラスバンド。
俺様の半生を良く表した、すばらしい名曲。
これが流れたらもう後は決まったようなものだ。
どれ、それではたっぷりと可愛がってやるか。
「うむ、この手のひらにすっぽりと収まるつつましいサイズの胸も、
それはそれでグッドだ。
かえって乳首のコリコリが良く分かる。」
「いや……恥ずかしい……」
「いやなら乳首など立つものか。
ほれ、ふにふにと手のひらを押し返してくるぞ。」
「私、初めてなの……優しくして。」
「がはははは、任せろ。
このランスさまのテクにかかれば、処女でもすぐに天国でアッハ〜ンだ!!」
ずぶり!!
俺様はすでにとろとろになっていた女のあそこに、勢いよく突っ込んだ。
ランスは心底楽しそうな高笑いを上げながら、ずんずんと腰を前後させている。
―――誰もいない空間に向かって。
そして、その脇でランスを見下す双葉。
クールな半眼には情欲も羞恥心も宿っていない。
「ホント男ってのは、何かあるとすぐにえっちな方向に持ってこうとするんだから。
あーあ、ホンモノの白馬の王子様って、やっぱりいないのかなぁ……ねぇ、こけし。」
黄色い小さな花に向かって、また一人ごちる双葉。
まるで首を縦に振っているかのように、花びらが揺れた。
そう。
全ては双葉の『幻術』だった。
鉢植えの花―――芥子の麻薬成分を抽出し、空気中に散布。
朦朧とした意識に言霊でもって幻を吹き込む―――幻術。
ランスが服を脱ぎだしたとき、それはもう完了されていたのだ。
双葉はランスが服を脱ぎ捨てた際に放っぽった斧を手に取る。
ずしりと重い手ごたえ。
「さてと、コレは危ないから没収ね。あとはこのバカをどうするかだけど……」
「がはははは、グッドだ、お嬢ちゃん!!」
ランスは幻覚の中で絶好調のようだ。
「ま、いっか。アタシはこの森の中では無敵なんだし。
放っときましょ、こけし。」
朽木双葉―――平安より伝わる陰陽師、朽木家の跡取。
植物を操る能力に秀でるこの一族の中で、近世稀に見る逸材といわれる天才児は、
後ろを振り返ることなく悠々とその場を立ち去った。
【No16:朽木双葉】
【所持武器:植木蜂+ケシの苗(名づけてこけし)、斧】
【現在位置:学校北部の森、中央付近から東へ】
【スタンス:殺意なし。馴れ合う気もなし。でも白馬の王子様は大歓迎!(w 】
【能力制限:術のキレと周囲の緑の量が比例する 】
※彼女は式神を操る術も身に付けています。
【グループ:ランス、ユリーシャ(現在別行動)】
【No2:ランス】
【所持武器:なし】
【現在位置:学校北部の森中央】