012 通りゆく風

012 通りゆく風


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第一日目 AM.3:30

「ちくしょう,なんなんだあのブルマー女は。」臭作が苦々しげにはき捨てる。
先ほど出会った女は突然自慰行為を始めたかと思うと,彼と彼の兄弟をふっ飛ばしたのである。
未知の恐怖に中てられた臭作は無我夢中で森の中を逃げ回り,
いつしか彼の弟達ともはぐれてしまっていた。
「ちくしょう,ちくしょう,ちくしょう。あの女,俺様の美学を踏みにじりやがって。
この臭作様をこけにしたこときっちりと後悔させてやるぞ。
死にたくなるほどの恥辱を与えてやる。絶対に,絶対に,だ。」
こめかみに青筋を浮かべ,歯をギリギリと噛み締めながら
怒気をはらんだ声でわめき散らし道なき道を走りつづける。
やがて体力の限界が訪れ,彼は茂みに身を潜め近くにあった木に体をもたれかけさせた。
とても壮年から老年への過渡期にあるとは思えぬ体力を持つとはいえ,
やはり肉体は衰えは隠せないのだろうか?


彼は所持していたコンバットナイフを握り締める。唯一の仲間であった兄弟ももういない。
「生き残れるのは一人だ。結局やつらとも殺し合うことになるんなら,
もう少し利用したかったがな…まったくあの小娘のせいで俺様の計画が台無しだ。
いまいましい女だ。」
配給袋から水を取り出し,口元から水が零れ落ちるのもかまわずに一気に飲み干す。
そして空になったペットボトルを苛立たしげに地面に叩きつけた。
その時、臭作は遠くにかすかな足音を聞いた。
そう思う暇も有らばこそ,次の数瞬のうちに彼の身に起こったことを彼はもはや知ることもないだろう。
いまや彼の心臓の部分に正確に七つの穴が穿たれている。彼が背にしていた木を突きぬけ,
彼の胸をも貫通していた。



そして遅れることわずかに数秒、彼を一瞬のうちに葬った男が音もなく現れる。
「悪く思わないで…なんて言えないよね…」自嘲気味に笑う。
臭作の命を絶ったのはただの石ころである。
風のごとく疾走するアズライトの手から放たれた七つの弾丸は狙いを過たず、臭作を襲った。
アズライトは一瞬悲しげな表情を臭作のほうへ向け,再び闇にとけた。


【No.4 伊頭臭作:死亡 】

―――――――――残り 37



【アズライト】
【所持武器:?】
【現在位置:?】
【スタンス:最大戦速】
【能力制限:デアボリカとしての能力は一時封印,
身体能力に関してはその限りではない】




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