241 経路思索

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(二日目 PM5:10 西の森)

 魔窟堂が出発した後、五人は待ち合わせ場所より少し離れた所にいた。
 「(靴跡から見て……一・二人以上の男性がここで休息を取っていた所でしょうか)」
 焚き火の跡を木の枝で弄りながら、そう紗霧は推測した。
 「この本は一体何だったのでしょうか?」
 炭化した本を見て、ユリーシャ。
 「恐らくハズレの支給品だったんでしょう」
 「(廃村から持ち出す必要はないだろうしな)」
 二人の会話に耳を傾けながら、恭也は斧の手入れをしているランスを見る。
 「木の枝よりかマシだが……やっぱりランスアタックは使えねえな」
 使用武器に不満げなランスに対して恭也は提案した。
「ナイフなら持ってるけど、使わないか?」
 戦闘スタイルを変える事を決意したが故の恭也の判断だ。 
「駄目だ。ナイフでは俺様の必殺技が使えん。 お前か、ジジイが持ってろ」
「ああ」
 次に恭也はまひるの方を向いた。
「……」
 まひるは手で後頭部を弄りながら、何かを思案していた様だった。
「……!」
 彼は自分を見ている恭也に気づくと、単刀直入に言った。

「ねえ……あたし達が持ってた荷物どうなってんだろ?」


             ●

「現地に放置か、本拠地のどこかでしょうね」
「参ったな……」
 恭也は修行中に所持していた、小太刀の事を思った。
 あれは彼にとって大事な品なのだ。
「あたしの肉マン……」
「俺様の剣…」
「……」
 召喚前から所持品がなかったユリーシャはただ黙ったままだ。
「(願いを言う前に…念入りに返却を求める必要がありますね)」
 紗霧は鞄の中身(金属バット・トンカチ・教材・簡易スタンガン等)を思い出しながら、心中で呟いた。
「ん……心配するな、お前ら」
 沈んだ空気に気づき、発破をかけるかのようにランスは言った。
「主催の金髪ムチムチねーちゃんが、刀を持ってた。
 俺様の魅力で仲間にした後に、刀を借りて俺様が使う!
 グッドだ! ガハハハハ…!」
 楽天的なランスの発言にユリーシャと恭也思わず顔を見合わせてから苦笑いをし、まひるは何故か虚を突かれたようにキョトンとしている。
「…………」
 紗霧はジト目で彼を見ながら思った。
「(そんなに上手く行く訳がないでしょ。
  第一運営者を全滅させる以外、貴方が生き残る方法が無いのが解っておいでですか?)」
 紗霧はランスの思惑通りに進める積もりはなかった。
 ただ情報は必要なので芹沢の事を慎重に言葉を選びながら、紗霧は聞くことにした。


               ●

 ランスは上機嫌に手に腰を当てて笑っている。
 それを尻目に紗霧は芹沢の現状を推測した。

「(彼女は本拠地で治療されて動けないでいるか、用済みで殺されてる可能性が高いですね)」
 考えを口に出さないのは、士気を下げたくなかったからだ。
 ランスの発言を聞き、考えをまとめていたのは紗霧だけでは、なくまひるも同様だった。
「(この辺、タカさんとそっくりだなぁ……)」
 ランスにタカさんと共通する部分を見出しての感想だった。
 彼女と出会った時、まひるはゲームのスタンスについて言われた事を思い出す。
「(……ホントは運営者とも戦わない方がいいと思うけどね……)」
 自分にだって願いを叶えたい気持ちはあった。だから、運営者の気持ちもわかる。
 それと同時に彼は生き残ってる参加者の事を考えざるを得なかった。脱出の方法自体、自分では思い浮かべさえも出来ない。
 仮にあったとして、同行者の気持ちを無視してまで願いを諦めろなんて彼には言えなかった。
 だから、これまで脱出しようとは提案しなかったのだ。
 けど、言わなきゃならないことは言うべきだと思い、彼は他の四人に言った。
「あたし達が家に帰るにはどうしたら、いいんだろ?」
「? そんなの決まっている。 主催のヤロウを殺せばいいのだ」
「帰してくれるの?」
「「「…?」」」
「何言ってる?」
 どこか気まずい沈黙が流れた。そんな中、先に口を開いたのはユリーシャだった。
「も、もしかして……元の所へ帰るのに、その願いを言う必要があるのでは……」
 少し空気が変わった。
 そして、渋面でランスは言った。
「……それは、ありそうだな」
 まひるは頷いた。



【グループ:紗霧・ランス・まひる・恭也・ユリーシャ・】
【現在位置:西の森】
【スタンス:主催者打倒、アイテム・仲間集め、西の小屋へ向かう、魔窟堂を待つ、一応、脱出方法を考える】
【備考:全員、首輪解除済み】

【ユリ―シャ(元01)】
【スタンス:ランスを中心にグループに協力】
【所持品:ボウガン、スコップ(小)、メス1本、指輪型爆弾×2、小麦粉、
      解除装置、白チョーク1箱…は紗霧に隠されてます】
【能力:勘が鋭い】
【備考:疲労(中)、紗霧に対して苦手意識】

【ランス(元02)】
【スタンス:女の子優先でグループに協力 、芹沢を探す
      男の運営者は殺す、運営者からアリス・秋穂殺しの犯人を訊き出す】
【所持品:斧、棍棒もどきの杖2 】
【能力:大剣がないので、ランスアタック使用不可】
【備考:肋骨2〜3本にヒビ(処置済み)・鎧破損・疲労(小)】
    
【高町恭也(元08)】
【スタンス:知佳の捜索と説得、】
【所持品:小太刀、鋼糸、アイスピック、銃(50口径・残4)、鉄の杖、保存食】
【能力制限:神速使用不可】
【備考:失血で疲労(中)、右わき腹から中央まで裂傷あり。
    痛み止めの薬品?を服用】


【月夜御名紗霧(元36)】
【スタンス:反抗者を増やし主催者へぶつける、計画の完遂、モノの確保】
【所持品:対人レーダー、レーザーガン、薬品数種類、謎のペン8本
スペツナズナイフ、金属バット、文房具とノート(雑貨屋で入手)、智機の残骸
の一部、 医療器具(メス・ピンセット)】
【能力:毒舌・隠匿】
【備考:隠しているけど疲労(中)、下腹部に多少の傷有】

【広場まひる(元38)】
【スタンス:智機以外の相手との戦闘はなるべく避ける。
      グループが危険に晒されるなら、応戦する
      島からの脱出方法を探る】
【所持品:せんべい袋、服3着、干し肉、救急セット、竹篭、スコップ(大)
      携帯用バズーカ(残1)、タイガージョーの支給バッグ(中身は不明)】
【能力:身体能力↑、????、怪力、爪、超嗅覚・感覚、片翼、衝撃波(練習中)使用】
【備考:疲労(小)】




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