217 束の間のパーティーミッション
217 束の間のパーティーミッション
前の話へ<< 200話〜249話へ >>次の話へ
下へ 第七回放送までへ
(第二日目 PM3:35)
「さて、これからの事を考えないといけませんね」
ユリーシャも起き、病院のロビーでやっとのこさ休息を得る一同。
施設内にあったコーヒーを飲んだりしながら、ソファーに座り一息をつく一同。
「ねぇ、狭霧さん、このまま、病院にいて大丈夫なのかな?」
「その心配は、少ないと考えた方がいいでしょうね」
「どうしてですか?」
余裕を見せる狭霧に対し、不安げなまひる。
「おそらく、先ほどの襲撃は、運営者側にとっても相当な力を入れたものだったに違いありません。
それを無事防ぎ…… いえ、全て撃破したのですから、相手側もかなり損失を受けたはずです」
「ふむふむ……」
「ですので、少なくとも、今すぐに追撃が来る可能性は薄いでしょうね。
尤もと、次に狙われる可能性も高いでしょうけどね……」
「…………………」
狭霧の冷酷な分析で、固まる一同。
「当然でしょう? あの襲撃は、おそらく主力だと思いますよ。
それを壊滅させたわけですから、しばらくは、動きが止まったとしても
次は、より手札を整えて、作戦を練ってくるはずです」
あわあわと動くまひるに、ずしーんと沈んだユリーシャ。
「ですから、今を休むんですよ。 そして、体力を回復させて、私たちも準備を整え、次に備えるんです」
対する恭也は、言われなくても解っているかのように
目を瞑って横になることで、少しでも疲れを取ろうとしている。
その心に知佳への思いを秘めながら……
「魔窟堂さん、まだですかね………」
ぽつりとまひるが言った。
「一時間以内に戻ってくるように言ったんですけどね。
明らかに5分も時間オーバーをしています。
これは、帰ってきたらきついお仕置きが必要です。
おかげで私たちは……」
今までの疲労と鬱憤ぶちまけるかのように
とぶつくさと魔窟堂への愚痴をたれ始める狭霧とそれを止めるようになだめるまひる。
一方、主(?)への身を案じるユリーシャ。
「ランス様…………」
「……ッ」
ふいにユリーシャが漏らした言葉に、今まで横になっていた恭也がピクッと反応した。
「あら、高町さん、知っているんですか?」
その様子を狭霧が見逃すはずがない。
すかさず恭也へと問い掛ける。
「ええ、一度、灯台の方へ行った時に出あった事が……」
「そうなんですか…… 丁度、私と別行動をしていた時ですね」
恭也は、平静を装っているものの、狭霧には、何かが引っかかるように思えた。
「へぇ、恭也さんは、会った事があるんですか。
どんな感じの人なんですか?」
かたや新しい仲間が加わるのを純粋に嬉しがるまひる。
「強い人だよ…… 単純に腕が強いってだけじゃない、戦闘経験が豊富な人なんだと思う。
潜ってきた修羅場の数が根本的に違いそうだったよ……」
(多分、今の俺じゃ勝てない可能性の方が高いな……)
「それは、頼もしい方なんでしょうね」
さらっと流した狭霧だが、内面では、既に分析を始めている。
(人格とかも突っ込みたい所ですが、グレーゾーンですね。
恐らく、何かしら問題のある人なのでしょう。
腕の強さを引き合いに出したと言う事は、最悪、交戦した事があるか、目の前で戦闘を見た。
共闘と言うのは、高町さんの反応から見て可能性は少ないでしょうね)
狭霧の予想は、ほぼ当っていた。
実際、傍からすれば、このバトロワ上、最もどうでもいい事でランスと恭也は、戦闘をし
恭也は、ランスの戦闘経験の高さに破れる所だった。
また恭也も考えを巡らせている。
(確かに強い、彼が味方になってくれれば、打倒主催者達にも手が届く可能性は高くなる。
けど、問題は、彼の人格だなぁ…………
<女は守って俺の物にする、男は俺の言う事聞かない奴は死ね>
解りやすいけど、無茶苦茶な人だ。
まさに諸刃の剣のような人だし、実際に俺は、一度戦闘しちゃってるのが……
どうするべきか、言った方がいいのかなぁ…………)
うーんうーんと悩みこんでしまう恭也。
だが、その時、期待の老星は、やっとのこさ帰って来たのだった。
彼が帰還した時に出迎えたものは、荒れすさんだ病院の光景であった。
見た目にもまだそれが新しいものである事は解る。
「狭霧殿ぉぉぉぉぉぉぉ!!!! まひる殿ぉぉぉぉぉ!!! 恭也殿ぉぉぉぉぉ!!!!」
やかましいと言うくらいの大声を上げながら、病院の中へと魔窟堂は入り叫んだ。
その叫びは、ロビーにも十分と響き渡る。
周りを見渡すが中々、人の気配がない。
もしかしたら、まだ刺客がいるかもしれないという危険を忘れ彼は叫びつづけた。
「………もしや………… すまぬ、すまぬ、わしが遅れたばかりにぃぃぃぃぃ!!!!
この仇は、絶対に取ってやるぞ!!! 必ずしや主催者たちを……ごふっ!!」
半崩壊した病院の入り口で叫ぶ魔窟堂の後頭部へと狭霧の飛び膝蹴りが直撃した。
腕に抱えられていたランスは地面へ転げ落ちるが、幸い、まだ意識は途絶えていたようで目覚めはしなかった。
「ええい、このボケ老人が!!
勝手に殺さないで下さい、私たちはみんな無事生きてますよ」
「ぐおおおおおおおおおおお…………」
一方、後頭部へ手痛い一撃を食らった魔窟堂は、痛みに悶えていた。
「全く、時間に遅れるわ、早とちりするわ、そろそろボケが進行してきたようですね」
「あの狭霧さん、ちょっとやりすぎじゃ…………」
狭霧に続くようにして、まひるが恭也を支えながら、ユリーシャはその後から続いて出てきた。
「ショック療法です、これでも足りないくらいです」
「ぉおおおおぉぉおお…… 狭霧殿に、まひる殿、おお、恭也殿も、そしてお嬢ちゃんも無事だったのか」
魔窟堂は、痛みを後頭部に残しながらも今までとは、打って変わった涙を流しだす。
「ランス様!?」
まひると狭霧と魔窟堂が漫才を繰り広げてる中、ユリーシャは、そこに倒れているランスの元へと駆け寄った。
また恭也は、その光景をいぶかしげに見ていた。
「おお、意識を失っとるだけじゃ。 疲労もたまっとるようじゃし、しばらくすれば目を覚ますじゃろう」
「では、救出は、成功したんですね」
「んむ………… その交戦してた相手の事なんじゃが……」
そうして、彼は、ランスが戦っていた相手の事を皆に説明し始めた。
「4〜5mもする巨体……」
「10本以上の腕だか触手だか……」
実際のケイブリスを見ているユリーシャは、その姿を思い出し、身震いするが
言葉として聞いた三人は、中々イメージが上手く思い浮かばず
とにかく強大な化け物というイメージが先行して強く植え付けられる。
「でも、そのランスさんは、その化け物と渡りあってたんですよね?」
狭霧が問い掛けた。
「うむ、見事なものじゃったぞ。
最後の衝突しかみれんかったが、まさに神技じゃったよ。
ところで、この病院の荒れ果てぶりはどうしたんじゃ?」
また魔窟堂も狭霧たちに何があったのかを尋ね
四人は、智機の襲来とそれを撃退した事について語り始めた。
「…………わしが遅れたばかりにすまん」
「そうで」
「いえいえ、魔窟堂さんは、こうやって救出してくれましたし
みんな無事だし、万事OKですよ。
それよりこれからの事について考えましょう」
「言うようになりましたね、まひるさん……」
魔窟堂を攻め立てようとした狭霧の言葉を遮って、まひるがフォローを入れる。
「ふむ…… どうする? 狭霧殿」
そこは、やはり参謀として頼りになる狭霧へと魔窟堂は、話を振った。
「そうですね…… 私は、病院から動いた方がいいと思いますね。
一箇所に留まりつづけて、主催者たちへの応対をするのは得策とは思えません」
「ところで、狭霧さん、何をしているんですか?」
ランスの身体を先ほどからぺたぺたと触りながら、話す狭霧に対して
ユリーシャが嫉妬からくる不機嫌そうな声で尋ねた。
「何か役立つものを持ってないか探してるんですよ。
気絶してるのに申し訳ないですけれど、事前に確保しておけばいざという時使えますからね。
大丈夫ですよ、貴女の考えているような事は、私は一切思ってませんから」
「す、すみません……」
そう彼女の考えを見透かした返事に、ユリーシャは、少し頬を赤くしながら、謝ってしまうのだった。
決心を固めたとはいえ、心の中は、まだまだ複雑……
「……古ぼけた鍵くらいしかありませんね。
もしかしたら、島の施設に使えるかもしれませんし、失敬させて貰いましょう」
「で、話を戻すが、他の皆はどうするかの?
わしもこれ以上、病院へ留まり続けるのは、いいとは思えん。
向こうが止まっている今のうちに、どこかへ移動した方がいいと思うんじゃが……」
「病院へ来る前にいた西の森の小屋はどうでしょうか?」
そこで、まひるが提案した。
「あそこですか……… いいかもしれませんね。
先ほど戦闘が行なわれた東の森と病院付近は持っての他、そうすると西から北西にかけては、今の所手薄と見るべきでしょうか……」
「ふぅむ、待ち構えられている可能性もあるしのう……」
「どちらにせよ、移動するなら今しかありませんね」
「よし、解った。 まずは、西の小屋へ向かおう。
そして、ランス殿のがまだ目覚めようであれば、そこで待機。
目覚めた後は、作戦を練り、その後、北進するか、東へ舞い戻るか決めればいいじゃろう」
「他の皆さんは、異論はあります?」
「私は、構いません。 ランス様の行く所について行きます」
「あたしもそれでOKです」
ぱっと決めた二人に対して、恭也は、再び悩んでいた。
「恭也さんは?」
「俺もそれでいいと思います……」
(全ては、目覚めてからにしよう。 今はイザコザを起こすべき時じゃない……
尤も、彼が起こす可能性は高いけど……)
「では、全員一致じゃな、まずは、西の小屋へと戻ろう。
っと、その前に持っていけるだけの使用頻度の高い医療用具と薬品を持ってくかの」
「それでしたら、既に私たちで確保は、できてますよ」
そう言うとサッと何処へ隠し持っていたのか薬品とメスを狭霧は、出し始めた。
「さ、流石、狭霧殿じゃの…… よし、では、出発するとするかのう」
【広場まひる】
【所持品:せんべい袋、服3着、干し肉、斧、救急セット】【現在地:西の小屋へ移動中】
【スタンス:参加者救出、争いをなるべく避ける】
【備考:身体能力↑、怪力、爪、超嗅覚・感覚、片翼、衝撃波(練習中)使用】
【月夜御名紗霧】
【所持品:対人レーダー、銃(45口径・残7×2+2)、薬品数種類
スペツナズナイフ、金属バット、文房具とノート(雑貨屋で入手)、智機の残骸
の一部、携帯用バズーカ(残1) 医療器具(メス・ピンセット)】
【現在地:同上】
【スタンス:反抗者を増やし主催者へぶつける。 モノの確保】
【各地で得た道具をまだ複数所持】
【高町恭也】
【所持品:小太刀、鋼糸、アイスピック、銃(50口径・残4)、保存食】
【現在地:同上】【スタンス:主催者打倒、知佳の捜索と説得】
【備考:失血で疲労:中、右わき腹から中央まで裂傷あり。神速使用不可。
痛み止めの薬品?を服用】
【ユリ―シャ】
【所持品:ボウガン、、メス1本、指輪型爆弾×2、小麦粉、解除装置、
白チョーク1箱】
【現在地:同上】【スタンス:現時点では病院組に協力。後はランス次第】
【魔窟堂野武彦】
【現在地:同上】
【スタンス:運営者殲滅】
【所持品:レーザーガン、軍用オイルライター、白チョーク数本
ヘッドフォンステレオ、マジカルピュアソング】
【ランス】
【現在地:同上】
【スタンス:打倒主催者・女の子を守る】
【備考:気絶中・肋骨2〜3本にヒビ・鎧破損】