216 小休止

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(二日目 PM3:19 病院)

紗霧らと合流するために病院の1階の廊下を恭也とまひるは歩いている。
「・・・・・・・・・・」
まひると智機の戦闘が行われた病院の廊下の惨状を見て、恭也は言葉を無くしてい
た。
(主催者が5人だけとは思えなかったが、まさか重火器を持った自動人形が複数いた
とはな……)
やや緊張した面持ちで、恭也はそう認識する。
(俺は運が良かったかも知れない……)
まひる達を強襲した智機と別行動をとった一体を何とか撃破したとはいえ、初めから
捕獲用の道具や重火器を使われたのなら、今の恭也に打つ手は全く無かっただろう。
(椎名智機か…ああいうのがまだいるのか…)
「恭也さん、ついたよ」
「ん?ああ……霊安室?」
「あ…ホントだ」
「ここにいるのか…?」
「間違いないって…おーい!紗霧さーん。姫さーん」
しばしの沈黙。霊安室のドアは内側から開いた。
「終わったようですね」
銃を右手に持った紗霧が出てきた。

「高町さんも無事だったんですか?」
「「も」とはなんだ?「も」とは?」
「失礼。てっきり強襲を受けたものだと」
「受けたぞ。なんとか倒したけどな」
「1人でですか?」
「そうだ」
「………。まずは貴方の首輪を解除させましょう」
紗霧は霊安室のドアを開けて、ユリーシャを呼んだ。
「え…?もう出てきて大丈夫なのですか?」
「大丈夫です。彼の首輪の解除をお願いします」
「は、はい」
「首輪を解除…。解除してくれるのか君は…」
「はい……」
解除装置を恭也の首輪に押し付け、ボタンを押した。
電子音と共に恭也の首輪が外れ、地面に落ちた。
「ありがとう。俺は高町恭也。君は?」
「ユリーシャと言います……………」
(皆様…ランス様をお願いします…)
自己紹介の言葉を伝えるとユリーシャは座り込み、眠り始めた。
「お、おい!」
「疲労でまた眠りについたようですね」
ユリーシャを抱えながら紗霧が言った。
「ここで話もなんですし、場所を変えましょう」
まひると恭也は同意し、ロビーの方へ移動した。




(二日目 PM3:25 病院)

ロビーのソファーにユリーシャが寝かされている。
恭也と紗霧は荷物をまとめながら話をしていた。
「広場さんは?」
「トイレにいきましたよ。ついでに道具の調達も頼んでます」
「そうか」
「で、高町さんは防御系の特殊能力の持ち主なんですか?」
「………。俺はそういう能力は持っていない」
「そうですか?」
「……なんでそんな事を聞くんだ?」
「貴方が倒れていた現場もそうですけど。45口径の弾丸をまともに受けても傷が比
較的浅かった貴方に興味があります」
「45口径……。そんなのを俺は、まともに喰らっていたのか…」
「現場に潰れた弾丸が落ちてましたから。高町さんの能力と思ったんです」
恭也は正直、奥義の事を紗霧には話したくなかったが、やがて口を開いた。
「俺の剣術の奥義で弾丸のいくつかを落としたんだ。あの時、半ば無意識に奥義の2
重がけをしたから、俺自身でさえ判らない何かの力が働いてたかもしれない」
「・・・・・・・・・・・」
(話から察するに高速で動ける能力みたいですね)
と、紗霧はそう結論付けた。
実のところ、紗霧は恭也の神速と同じように、高速移動できる歩法を持つ武術をよく
知っている。四次元流格闘術。紗霧の想い人であった鋼鉄番長はそれを受け継いでい
た。
「兎に角、火気類を持ったロボットが相手です。無理はしないで下さいね。貴方に
は…知佳さんを助けないといけないんですから」
「判っているさ」と、恭也は力強くそう答えた。




(二日目 PM3:27 病院)

まひるはトイレの便座で用を足した後、座ったまま物思いにふけっていた。
(この島から逃げ出せないんだろうか?)
(でも、昨日見たあの海は、生命の息吹が感じられなかった)
まひるは頬杖をついて嘆息した。
(この島、やっぱり変だ)
(あれだけ戦っても、あたしの姿は変化しないし)
正直言って、獣の姿には戻りたくはなかったが、戻れないなら何故、そうなのかが気
になる。まひるは自分の手を見つめて、精神を集中した。
まひるの瞳に紋様が浮かび、爪が伸び、刃物の様な光沢を放つが、比率でいって虎の
爪程度しか伸びなかった。本来ならまひるの四肢が巨大化し、爪は容易に人の首
くらいなら切りとばすほどの長さになるはずだった。
まひるが精神の集中を解くと、瞳に浮かんだ紋様は消え、爪も元の長さに戻った。
(訳わかんないや…)
まひるは便座から立ち上がると、ドアを開けて、お手洗いのところで顔を洗い始め
た。
(砲弾を避けて天井にぶつかった頭も数分間痛んだし傷の治りも遅いかもしれない)
(でも、頑張らなきゃ。タカさんと薫ちゃんに助けてもらったこの命、大切にしな
きゃ!)
まひるはそう自分に言い聞かせて、トイレを出たのだった。

数分後、まひるが病院の南の民家から保存食を持って戻り。
ユリーシャも目覚めたことから、一同はいつでも出発できるように準備をしながら
魔窟堂が戻ってくるのを待ったのだった。



【広場まひる】
【所持品:せんべい袋、服3着、干し肉、斧、救急セット】【現在地:病院】
【スタンス:参加者救出、争いをなるべく避ける】
【備考:身体能力↑、怪力、爪、超嗅覚・感覚、片翼、衝撃波(練習中)使用】

【月夜御名紗霧】
【所持品:対人レーダー、銃(45口径・残7×2+2)、薬品数種類
スペツナズナイフ、金属バット、文房具とノート(雑貨屋で入手)、智機の残骸
の一部、携帯用バズーカ(残1)】 【現在地:病院】
【スタンス:反抗者を増やし主催者へぶつける。 モノの確保】
【各地で得た道具をまだ複数所持】

【高町恭也】
【所持品:小太刀、鋼糸、アイスピック、銃(50口径・残4)、保存食】
【現在地:病院】【スタンス:主催者打倒、知佳の捜索と説得】
【備考:失血で疲労:中、右わき腹から中央まで裂傷あり。神速使用不可。
痛み止めの薬品?を服用】

【ユリ―シャ】
【所持品:ボウガン、、メス1本、指輪型爆弾×2、小麦粉、解除装置、
白チョーク1箱】
【現在地:病院】【スタンス:現時点では病院組に協力。後はランス次第】




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