147 ラストメッセージ

147 ラストメッセージ


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(21:30)


ご主人様。
ナミがこの島で目覚めてから、もう丸一日経とうとしています。
今までで17人死んでいます。
すごく悪いペースです。
アクシデントがあって、ナミは一旦強制終了しちゃいましたけど、
こうして無事再起動できました。
しかも再起動したおかげで不正に埋まっていたメモリが開放されて、
演算能力とか動作のレスポンスが向上しちゃいました。
塞翁が馬ですね。

いろいろゴタゴタがあって今まで言いそびれていたんですけど、
ナミ、とてもぶさいくになっちゃいました。
余計なエネルギーが消費されるから、お肉を全部取っちゃったからです。
ご主人様が可愛いといってくれた顔も、
ご主人様がたくさん吸ってくれた乳首も、
ご主人様に毎晩愛の証を注ぎ込んでいただいた恥ずかしい場所も、
全部捨てちゃいまいました。
ごめんなさい。
戻ったら一生懸命ドールファイトして、いっぱいパーツ代を稼ぎますから許してください。
今のナミはものすごく強いですよ?
サファイヤなんて瞬殺です。

……夜のご奉仕は暫く出来ないですけど。

コホン。
それでは、時間も無くなってきたので、本題に移りますね。

賢い主婦は節約上手って言いますよね。
ナミもメイドロボですから、そのへんには特に気をつかっちゃいます。
お肉はタイムサービスを待つとか。
お風呂の水はぽたぽた出しで溜めるとか。
電子レンジやテレビのコンセントは刺しっ放しにしないとか。
一円も千枚あれば漱石さんですし、一万枚あれば諭吉さんですから。

……あはは、何言ってるんでしょうねナミは。
本題に移るって言ったのに、前置きばかりで。

じゃあ、今度こそ本題です。

ええと……
だから……

節約っていうと、思い出しますよね?
ナミがご主人様に買っていただいたばかりの頃。
ナミはまだ駆け出しのファイターで、維持費ばかりかかってろくに賞金も取れず、
いつも赤貧にあえいでいましたよね。
いろんなところを節約して、何とか毎日を暮らしていましたよね。
ナミもご主人様にいろいろ生活改善のご提案をしましたけど、
本当は一番の生活が楽になるプランを知ってたけど、ずっと隠してたんです。
それは、ナミを売ってしまうこと。
ご主人様もホントはそれが一番だってわかってたと思います。
でも、ナミを手放さずにいてくれた。
ナミのことをいらないって、一度も口に出さずにいてくれた。
ナミ、すごく嬉しかったんです。
あのときから、ずっと、心の底から、本当に。
ナミはご主人様のことが大好きです。

って、また脱線してますね。
ううぅ……

ちょっと深呼吸しても良いですか?
すー、はー、すー、はー。


それじゃ、今度こそ本題を。結論から行きます。

ナミがブラックボックスに吹き込むメッセージは、これで最後になります。

諦めたんじゃありませんよ。
エネルギー節約のためです。
もう、ナミのエネルギーは残り僅かなんです。
補充できる見込みもありません。
ですから、お肉を殺ぎ落としたみたいに、戦闘に関わらない装置・機能への通電を、
全部遮断することに決めました。
そのいらない能力の中に、発声ユニットも含まれますから、もう喋れなくなります。

本音は、すごく淋しいです。
ナミはいつだってご主人様がそこに居るって思いながら、メッセージを吹き込んでいました。
きっとご主人様はこんな顔して聞くんだろうな、とか、
ここでツッコミが入っちゃうんだろうな、とか、
ご主人様の返事を、リアクションを、想像しながら話してました。
この殺伐とした島の中で、この時間だけが、ナミの心の安らぐ時でした。

でも、生存率が上がるなら、それはご主人様により近くなる、ってことですよね?
出来る努力は惜しんじゃいけませんよね?










だから、さよならなんていいませんよ。



                  【ナミ】
                  【現在位置:集落北部の路上】
                  【能力制限:持続力少量上昇。移動・攻撃のみ可能】




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