114 忍び寄るヤミ、一つ

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(一日目 PM16:00)

堂島は港にいる。
奇怪な男はそう言った。
本来の人格たる藍を抑え、
主導権を得た獣に必要な情報はそれだけである。
(地図によると・・・、港は南だね。)
地図をしまい、コンパスを取り出すとテクテクと歩き出す。
別段急ぐ様子はない。
それというのも彼女の力は夜の闇とともに、
月の光とともにあるものだからである。
まだ日が出ているうちは彼女の時間ではない。


敵を避けるための行動であろうが、
まばらな建物の影や死角になる箇所を選んで通るさまは
どことなく猫科の動物を思わせる。
右手の寂れた村落の向こうに太陽が没するのが見える。
獣の瞳を捕らえてはなさない光景。
その光景は10年来彼女が過ごした村を思わせる。
安曇村。
時代から取り残された時間の中で
「お兄さん」と呼んだ人と過ごした村。
まもなく、そんな記憶も全て消えてしまう。
堂島を殺せば・・・・・・
ある感情が獣のうちに滲み出す。
しかし、彼女は契約の獣である。
堂島は殺さねばならない。
目に見えぬ何かを振り切るようにして、
そこから視線をそらす。


堂島は港にいる。
奇怪な男はそう言った。
あたりに人影はなく、一軒のプレハブがぽつねんと建てられている。
その戸口に生真面目な顔で何かを守るようにして立っている男がいる。
「見つけたょ、堂島薫。」
待ち焦がれた恋人に再会した少女のように、
頬を紅潮させ、夢みるように呟く。


契約の獣は闇を待つ。
まだ日が出ているうちは彼女の時間ではないから。



【松倉藍】
【現在地:港周辺】
【スタンス:獣:堂島殺害
      :藍:@、神楽捜索
         A、獣の封印/別離】
【備考:主人格=獣】




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