144 見上げる空には満月
144 見上げる空には満月
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(第1日目 PM11:50)
「ン…」
波の音が聞こえる。
ぼやける目をこすってあたりを見わたす。
とうに夜の帳の落ちた島内はほのかな月明かりに照らし出されて
何もかもみなが幾分蒼ざめて見える。
はぁっ、と一息つくと藍は衣服の乱れを直し、頭上の月を眺めた。
まるい、まるい満月が欠けたところもなく見下ろすように超然と輝く。
「もう少し…かな?」
そっと口に出してみて、何かを確かめるように
手のひらを伸ばしたり握り締めたりを繰り返す。
もう一度ゆっくりと頭をもたげさせて月を眺めると
やがて立ち上がり、
身を寄せて眠っていた彼女の身体をすっぽりと隠す大きな岩から離れた。
50mほど先に冷ややかな月明かりとは違う
人工の暖かい光が漏れ出ているのが見える。
「あそこに、堂島はいる。」
確認するように、その言葉を一つ一つ転がすように、小さな声で呟く。
月が南中するとき、真の獣の時間がやってくる。
静かな夜に、寄せては返す波の音だけが鳴り響く。
既に藍は眠っている。
だから、この身体は獣のものだ。
まぶたを下ろし、深く息を吸い、ゆっくりと時間をかけて吐き出す。
獣の時間がやってくる。
契約の時間がやってくる。
堂島薫を殺す時間がやってくる。
【松倉藍】
【現在地:港周辺】
【スタンス:獣:堂島殺害
:藍:@、神楽捜索
A、獣の封印/別離】
【備考:主人格=獣