A-06 253b What was that moon?

A−06 253b What was that moon?


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(二日目 PM5:13) 
 
 空は赤み始めていた。
 とぼとぼと歩き続けている、灰色のオーラを纏う小柄な少女の上を数羽の鳥が通り過ぎる。
 鳥の鳴き声を聞き、少女はふと顔を上げた。
「……」少女――仁村知佳は途方に暮れていた。
 折角見つけた利用施設は自分では扱えそうもない。
 それに加え、場所を伝えるべき仲間もいなかった。 
「…わたしに…できること…ないのかな…」
 そう言い、知佳は右手に持った手帳をきゅっと握った。手が震えた。
「(違う…できることが…ないんじゃない…)」
 手帳の中身はまだ見ていない。何処と無く不吉な予感がしたからだ。
「(怖いから…何も)」
 向こうには病院が見えた。
「(…あそこにいるのかな?)」
 逢いたい。けど、それ以上に逢う勇気が今の知佳にはなかった。
 知佳は不吉な考えをしないよう、恭也との明るい記憶を呼び起こそうとした。
 今日の日中のことはあえて記憶から遠ざけ、病院に来る前のやり取りを無理に思い出した。
 あの時、夜中の放送を聞いた時、自分は対してその事に気を止めていなかったんだなと知佳は思う。
 いざとなれば自分の力があると思ったから。今にして思えば、それは傲慢に違いなかった。

 そもそも、自分はこの島から脱出さえできなかったではないか。
 『願い』がある以上、脱出という選択肢は知佳の中に存在していない。
 知佳は視線をやや上に移した。
「(綺麗な…夕日…)」
 赤とオレンジが絶妙にブレンドされたような色彩を持つそれは、微妙に円形を崩していた。
 それを不恰好とは思わない。
 夕日はこれから一時間以上も、昨日よりも島を美しく彩るに違いないからと知佳は思った。
 何も夕日だけではない。この島は月も綺麗に見せてくれる。
「…………?」知佳の心にふと疑問が浮かんだ。
「(昨日の夜…)」放送直前だっただろうか?
 綺麗な月が欠けていく光景を恭也と一緒に見たのは。
 日本ではまだ月蝕が観測される時期ではないはずだ。
「(…………ーん?)」
 知佳はこの島が何処であるかなんてまともに考えたことはなかった。
「(月蝕……)」
 古来から月蝕は何かの怪異と関連つけられてきたという伝承があったのを知佳はぼんやりと思い出す。
 だが、その詳細まではうまく思考が纏まらず、答えが出なかった。
「………」
 改めて、知佳は手帳と病院を意識した。このまま惑っていても、何も進展しない。
 今できる、何かをしないとますます鬱屈してしまうだろうと自らを叱咤した。
 知佳は服の裾で顔をごしごし拭うと、足取りも確かに目的地へと向かった。
「(他の人なら……もっと詳しいこと知ってるかも)」と僅かに期待して。


 その頃、恭也とユリーシャも丁度、月蝕の事を思い出していた事を知る由も無く。



【仁村知佳(40)】
【現在位置:学校・公園間道路→???】
【スタンス:恭也が生きている間は、単独で彼らの後方支援へ
      主にアイテム探しや、できうる限りの情報収集、主催者への妨害行為】
【所持品:???、まりなの手帳】
【能力:超能力(破壊力さらに上昇中・ただし制御は多少困難に)飛行、光合成】
【備考:疲労(小)】



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232 より鋭く、深く
仁村知佳
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